死亡後に引き取り手のない「無縁遺体」が茨城県内で急増している。読売新聞が県内44市町村に行ったアンケートで、昨年度に自治体が扱った無縁遺体は計413人に上り、把握できる限りで10年前と比べて5倍近くに増えていることがわかった。自治体職員の負担や公費支出も増えており、識者は「社会全体で問題を認識すべきだ」と指摘している。
読売新聞は県内の全市町村を対象に、2012年度から22年度にかけ、扱った無縁遺体の人数や行政が代行した火葬件数などを年度ごとに尋ねるアンケートを実施し、全市町村から回答を得た。保管期限が過ぎて資料を廃棄し、件数を把握できない年度がある自治体もあった。
市町村は「墓地埋葬法」などに基づき、無縁遺体を扱い、火葬も行う。行き倒れなど身元不明で亡くなっている場合のほか、単身者や生活保護の受給者が死亡し、引き取り手がいないといった場合、無縁遺体として扱われる。親族がいても疎遠などを理由に拒否される際は、行政が代わりに火葬する。
アンケート結果では、無縁遺体を扱った件数は県内全体で12年度は88人だったが年度ごとに増加、22年度は413人に上った。内訳は土浦市が50人と最多、取手市(40人)、つくば市(35人)と続いた。
無縁遺体とは別に、親族から「火葬代は出せないが遺骨は引き取りたい」といったケースもあるため、行政が火葬した件数は把握できる限り、22年度で計479件と更に多い。12年度(59件)の約8倍で、増加傾向にある。
件数の増加に伴い、市町村の現場は様々な問題が生じている。無縁遺体が確認されると、親族を調べる戸籍調査、火葬の手続きなどに始まり、親族がいれば遺体や遺骨に関する話し合いなど多岐にわたり、休日でも突発の対応が求められる。
回答では「遺族などを捜す過程で膨大な時間がかかる」(茨城町)、「死亡届や火葬は待ったなしの対応が求められ、大変負担に感じる」(高萩市)などが多かった。
葬祭費用は1件あたり約20万円が目安で、死者に現金や預貯金など遺留金があれば充当できる。だが、預貯金については「金融機関に対して統一された手続き方法や基準がなく、手をつけづらい」(牛久市)などの声も上がった。
遺留金がなかったり、親族らが負担しなかったりした場合は、主に市町村が葬祭費用を立て替え、後に県が負担する形などをとる。件数の増加で、葬祭費を年度当初から予算計上して対応する自治体も増えている。
総務省初調査 県別は非公表
無縁遺体を取り扱う自治体の負担軽減を図ろうと、総務省は無縁遺体などに関する全国調査を初めて実施し、今年3月に結果を公表している。
調査では2018年4月から21年10月までの間に、全国で引き取り手のない遺体が計約10万6000人に上った。また、火葬後の遺骨の取り扱いについて、全国の自治体で管理や保管している「無縁遺骨」が21年10月時点で約6万柱あった。
ただ、調査結果では、都道府県別や年度ごとの数は公表しておらず、地方の実態や傾向を個別に把握することはできなかった。
税負担必要に
淑徳大の結城康博教授(社会福祉学)の話「無縁遺体の増加は、生涯未婚率の上昇や人間関係の希薄化から親族との縁が切れやすくなっている『無縁社会』と密接に関係している。遺体の引き取りは身内の役割だったが、公共サービスの側面が強くなってきており、社会も遺体の対応に税負担が必要な時代がきていると認識すべきだ。今後も遺体の増加が見込まれるため、自治体は態勢強化などの検討を今から始めてほしい」