盛山正仁文部科学相は12日、記者会見を開き、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対する解散命令を東京地裁に請求すると発表した。文科省は霊感商法や高額献金などの金銭トラブルに教団が組織的に関与し、遅くとも1980年ごろから繰り返されたと認定。宗教法人法81条が解散命令の要件とする「法令に違反し、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」「宗教団体の目的を著しく逸脱した行為」があると判断した。
同日、文科相の諮問機関「宗教法人審議会」で盛山氏が方針を示し、全会一致による了承を得られたため、13日にも東京地裁に解散請求をする。盛山氏は審議会後の記者会見で請求理由を説明し、不安をあおり物品を買わせたり、不当に高額な寄付をさせたりする一連の行為は「旧統一教会の業務、活動として行った行為だ」と指摘。「献金の獲得や物品販売にあたり多くの方を不安や困惑に陥れた」と述べた。
また、岸田文雄首相は12日夕、盛山氏と首相官邸で会談後、記者団に「文科相から請求を行う判断をし、東京地裁に請求すると報告を受けた。法律に基づき客観的な事実にのっとって作業を行い、その上で文科相として判断した結果であると認識している」と述べた。
一方、旧統一教会は12日に「極めて残念で遺憾。国から解散命令を受けるような教団ではないと確信している。裁判において私たちの法的な主張を行っていく」などとする声明を出した。
これまで「法令違反」を理由に解散命令が確定した宗教法人は、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と霊視商法詐欺事件の明覚寺(和歌山県)のみ。ただ、旧統一教会はこの2件とは異なり、教団トップらが刑事事件で立件されておらず、今回は金銭トラブルを巡る民法上の不法行為を根拠に解散請求する。
裁判所への請求から解散命令の確定までに、オウム真理教は7カ月、明覚寺は3年かかっており、旧統一教会に対する判断が確定するまでには、長い時間を要する可能性もある。
文科省によると、旧統一教会を調査した結果、1980~2021年に高額献金や霊感商法などによる不法行為で、教団の損害賠償責任を認めた判決が32件で169人、損害賠償額は約22億円に及ぶことを確認した。訴訟外の和解や示談を含めると約1550人、解決金などの総額約204億円の損害を与えたと認定した。
これらの行為について正体を隠した勧誘などの手法が共通し、一部でマニュアルが存在していたり、地域の教会に獲得金額のノルマを課していたりしたことから、教団の組織的な関与があったと判断。岸田首相が昨年10月、解散請求の要件として示した「組織性」「継続性」「悪質性」が認められ、公共の福祉を害すると判断した。
文科省の外局・文化庁は昨年11月、宗教法人法に基づく「質問権」を行使した教団の調査に着手。今年7月までに計7回の質問をして、教団内のガバナンス(組織統治)や資金の流れが分かる資料の提出を求めることで、金銭トラブルに教団が組織的に関与したかを調べた。だが、同庁によると、計500項目以上の質問のうち100項目以上で「信教の自由」などを理由に回答を拒否した。
質問権だけでは十分な根拠を積み上げられないことから、金銭トラブルの被害者ら170人超にヒアリングを重ね、信者らに法令順守を徹底させるとした「コンプライアンス宣言」(09年)以降も不法行為が続く実態も把握した。
東京地裁は、請求を受理後、非訟事件手続法に基づき、教団に対し解散命令を出すかどうかを非公開で審理する。地裁の判断に不服があれば、文科省と教団の双方は、高裁、最高裁でも争える。解散命令が出た場合、教団は宗教法人格を失って任意団体となり、税制優遇が受けられなくなる。【深津誠、李英浩、森口沙織】