福井知事の核燃料搬出計画容認に賛否 「判断を尊重」「茶番だ」

福井県の杉本達治知事は13日、福井県敦賀市内で、関西電力の森望社長、西村康稔経済産業相とそれぞれ会談し、関電が提示した県内の原子力発電所から出る使用済み核燃料搬出のロードマップについて容認した。県内からは、知事の姿勢を歓迎する声が上がる一方で、具体性に欠ける関電のロードマップへの疑問や、議論の時間の短さにも不満の声が出た。【国本ようこ、高橋隆輔、柴山雄太】
この日の会談に同席した県議会の西本正俊議長(自民党福井県議会)は、毎日新聞の取材に「(原発行政を所管する)西村経産相の言葉や表情から、今回のロードマップをしっかり進めていこうという強い意志を感じた。それを信用するしかないし、知事の判断を尊重したい」と話した。原発のある大飯郡(高浜町など)選出の田中宏典県議(同)も「6月以降、反発していた地元の意向は関電の方針を受け入れる方向へ変わってきていた。十分にくみ取っていただいた知事に感謝申し上げたい」と歓迎した。
一方、野党系の県議らから知事の判断を疑問視する声が目立った。無所属の細川かをり県議は「もっと議論しなければならない問題。乾式貯蔵をするにせよ、福井県が最終処分場にならないよう期限を設けるべき」。立憲民主党の野田哲生県議は「容認する期限を決めた押しつけの説明であり、(小浜市など)原発立地に近い市町との議論は深まっていない。県民不在の中で簡単に容認したことは極めて残念」と述べた。
地元からも、厳しい意見が相次いだ。元関西電力社員で脱原発を訴える山崎俊太郎さん(84)=美浜町=は、「条件に不透明な部分が多い。持って行き場がなければ40年、50年と置くことになり、結局『核の墓場』になる」。市民団体「オール福井反原発連絡会」事務局の林広員さん(63)=福井市=は「容認を急いだという印象が拭いきれない。住民の声を聞いて丁寧に対応してほしかった。住民への説明会を開いてもらうよう働きかけたい」と話した。
また、脱原発に取り組む「サヨナラ原発福井ネットワーク」の山崎隆敏さん(74)=越前市=は「40年超原発の運転継続ありきで、すべてが茶番に感じられた。今回ほど民意が大事にされていないと感じたことはない。県民がよく分かっていないことをいいことに、ごまかしている」と憤った。
杉本知事は会談後記者団の取材に、40年超原発3基が停止することの影響などを考慮した上での判断かどうかを問われ、「40年超原発が安全であれば安定的に運転していくことは立地地域も求めていることで、必要なことだが、それが念頭にあったということではない」と否定した。
同県鯖江市出身でエネルギー政策に詳しい龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)は「元々の『約束』は、使用済み核燃料をしっかり県外に搬出するという内容だが、具体的な候補地は示されず、話がずれている」と指摘。今回関電が搬出先に挙げた青森県六ケ所村の再処理工場が、すでに26回も完工を延長している点を挙げ「核燃料サイクルは破綻しており、本来は使用済み核燃料の問題を正面から議論する時期。それを国が放棄し、しわ寄せが地方に行っている」と説明した。

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