神宮外苑・再開発問題は「貧すれば鈍す」の象徴だ なぜ欧米では「私有地だから自由」が厳禁なのか

明治神宮外苑の再開発の是非が大きな論争になっている。再開発は本当に必要なのか。そもそも都心部の再開発はなぜ必要なのか。 大手不動産デベロッパーの経営陣として再開発に携わってきた著者が、日本における再開発の課題について論じる。
明治神宮外苑の再開発の是非が大きな論争になっています。
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そこで、港区や「神宮外苑地区第一種市街地再開発事業」の事業者である三井不動産のプレスリリースを読んでみましたが、この計画を見る限り、再開発事業としてはよく考えられた案だと思います(もちろん、港区が要請している銀杏並木の保全については、引き続き注視していく必要はありますが)。
とはいえ、この再開発は延々と批判の対象になっていて、特に神宮外苑に高層ビルが必要なのか、銀杏並木は本当に保全されるのかについて、都民の納得が十分に得られたとは言えない状況にあります。
そのため、今年9月中にも高さ3メートル以上の木の伐採が始まる予定だったものが、東京都が事業者側に対して具体的な樹木保全策を提出するよう求めたことで、年明け以降に延期されています。
そこで、今回はこの問題について、私なりの視点で整理してみたいと思います。
都心部・大規模再開発の仕組み
これまで東京都心で進められてきた大規模再開発の手法を簡略化して説明すると、①開発事業者が開発資金の大半を提供する、②道路や公園や公開空地などを整備する代わりに容積率の割増や高さ制限の緩和などの特典をもらう、③権利変換による地権者の取り分(権利床)を除いた余剰床(保留床)の部分を、開発事業者が上記開発資金の見返りとして受け取る、という仕組みで成り立っています。
もちろん、細かく言えばさまざまなバリエーションはあります。詳細は公表されていませんが、今回はこの地域の高さ制限の撤廃に加えて、開発事業者である三井不動産や伊藤忠商事による、当該地域の空中権の買い取りという仕組みも使っているようです。
いずれにせよ、これまでの規制では捻出できなかった余剰床の部分を開発資金を提供する見返りとして受け取れるからこそ、三井不動産などの事業者は再開発事業を引き受けるのであって、単なるボランティアで数千億円の資金を提供することはあり得ません。
そして、余剰床というのは、それまで設けられていた高さ制限や容積率などの緩和があるからこそ出てくるもので、ただ既存の建物を修繕したり建て替えたりするだけでは生まれてきませんから、再開発と高層ビル建築の問題はセットだと言うことができます。

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