〈 《虐待禁止条例を撤回》 自民党埼玉県議団長・田村琢実県議が“北川景子似”受付嬢と「不倫キス」写真 「こちらのほうが子どもへの“虐待”では…」 〉から続く
「虐待禁止条例」改正案の撤回を巡って物議を醸している自民党埼玉県議団の団長、田村琢実・埼玉県議(52)が、自身が過去に設立した個人企業に公金である政務活動費約1700万円を還流させている疑いがあることが、「 週刊文春 」の取材でわかった。田村氏は代理人弁護士を通じて「不適切な点はない」としている。
自民党の埼玉県議団が提出し、10月6日に埼玉県議会の委員会で可決された「虐待禁止条例」の一部改正案。その内容は、成人の「養護者」が小学3年生以下の子どもを放置することを禁じ、小学4~6年生については努力義務とするものだ。「短時間でも子どもに留守番をさせる」などが禁止事項に挙げられ、県民にも通報を義務づけていた。だが、「共働きの家庭にとっては現実的でない」などの批判が噴出。結果、「説明不足」だったとして10日に改正案を取り下げる事態に追い込まれた。
条例改正を主導していたのが、県議団団長の田村氏だった。2007年の県議選で初当選。2019年の県議選で4期目の当選後、2020年には埼玉県議会議長に就任した。その田村氏を巡り、「週刊文春」は 10月12日配信のスクープ速報 で、“北川景子似”の受付嬢との「不倫キス」写真を報じている(田村氏からは期限までに回答はなかった)。
埼玉県議団から田村氏設立の会社への支出が次々と
今回、新たに発覚したのは、田村氏の政務活動費の使途に関する不透明な実態だ。埼玉県議には給与とは別に、1人当たり政務活動費が年間600万円分支給されている。田村氏の使途で、目立つのが「株式会社TMコーポレーション」への支出だ。例えば、昨年4月28日には、広報誌「チャレンジスピリッツ」の制作・印刷・封入代として、同社に20万5168円を支出し、このうち政務活動費から13万3884円を充当している。
加えて、埼玉県議団も今年2月28日、「県議団ニュース」の印刷費等として同社に113万9930円を支出し、このうち政務活動費から110万5732円を充当している。こうした「TMコーポレーション」への支出に充てられた政活費を合計すると、過去3年間で1700万円を超えていた。
この「TMコーポレーション」は元々、田村氏が2003年に設立した会社で、当時は「有限会社タムラコーポレーション」という名称だった。以降、代表取締役を務める傍ら、2007年に県議選に初当選。その後、2013年に「有限会社TMコーポレーション」へと商号変更している。さらに2015年に現在の「株式会社TMコーポレーション」に再び商号変更し、2018年には知人のS氏が代表取締役に就いていた。
多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図
県議会関係者が指摘する。
「S氏は薬局関係の会社を経営しており、名義貸しのようなもの。県議会は政活費の運用指針で、親族や本人が代表を務める会社への支出には慎重な対応を求めており、表向き代表を降りたのでしょう。ただ、現在も田村氏が、毎年同じレイアウトに文章をはめ込んでいると聞きます。しかもTM社の印刷費はネット業者の2~3倍の価格。不当に多額の公金が“身内”のようなTM社に流れている構図で、党内からも疑問の声が上がっています」
田村氏に事実関係の確認を求める質問状を送付したところ、代理人弁護士名で主に以下のような回答があった。
「有限会社TMコーポレーション(株式会社TMコーポレーションに商号変更。以下、「同社」といいます。)は、田村氏が埼玉県議会議員に就任する前の2003年に同氏が設立したものですが、2013年、田村氏が100パーセント保有していた同社株式は全て第三者に譲渡されており、同社取締役からも退任しています。妻(回答は実名)も同時に同社取締役から退任しております。それ以降、田村氏(及び妻)は同社の経営に一切関与しておらず、同社を実質的に支配しているとの事実もございません。
また、『チャレンジスピリッツ』の印刷は同社が信頼できる印刷業者である等の理由から同社に発注したものです。『県議団ニュース』については、田村氏が同社を県議団に紹介し、同社に相見積もりを依頼したことはありますが、その後の発注業務は県議団において処理されているため、同社に発注された理由の詳細については分かりかねます。
埼玉県議会制定の『政務活動費の運用指針』において、『配偶者、被扶養者、同居者など生計を一にする者や自らが代表者・役員等の地位にある法人に対する支出は、実費の弁償ではないとみなされるおそれがあるため慎重な対応を要する。』とされていますが、事実関係は上記のとおりであり、同社に対する印刷発注の支払いに政務活動費が充てられたことは、上記『政務活動費の運用指針』に何ら抵触せず、不適切な点はないものと存じます」
政活費に詳しい神戸学院大の上脇博之教授が指摘する。
「公金である政活費の使途には極めて高い透明性が求められます。県議が形式的に取締役を務めていなくても、実質的にその人の会社となれば、運用指針に抵触し得る。相場よりも金額が高ければ、差額分が寄附に当たりかねない。十分な説明が求められます」
10月18日(水)12時配信の「 週刊文春 電子版 」および10月19日(木)発売の「週刊文春」では、田村氏と受付嬢の「不倫キス」写真の詳細のほか、TMコーポレーションの現代表取締役S氏との一問一答などについても報じている。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年10月26日号)