「税は鬼門」与党慎重、防衛費増との整合性を疑問視…首相が所得税減税の検討指示

岸田首相が所得税減税の検討を指示したことを巡り、自民、公明両党では、政権浮揚の効果や防衛費増額のための増税との整合性を疑問視する声が上がっている。過去の内閣では、減税で苦境に追い込まれたこともあるためだ。野党は「露骨な選挙目当て」などと批判を強めている。

「やや立場を超えた話になるが、これから減税策を考えるのに、来年から防衛増税をやるのは国民に全く分かりづらい話だ」
自民の萩生田政調会長は20日、首相官邸で首相と面会した後、記者団にこう強調し、所得税増税も含めた防衛増税の来年実施見送りは既定路線だとの考えを示した。
防衛増税との関係に関しては、公明党の北側副代表も「整合性を持たせないといけない」と語っていた。
そもそも、所得税減税は、法改正が必要で実施に時間がかかるほか、税が給与から天引き徴収される会社員らには恩恵を実感しづらいとの問題点が指摘されている。萩生田氏も「効果はなかなか出てこない」と語ったこともある。
首相は18日、麻生副総裁と党四役との「6者会合」を開き、減税にも言及したが、出席者の一人は「慎重な意見が多かった」と振り返った。所得税減税については、政府・与党内で元々浮上していたのにもかかわらず、与党の経済対策提言では触れず、首相が指示する形となったことについても、自民の閣僚経験者は「引っ込めたり、出したりしているようで国民に分かりにくい」と苦言を呈した。
経済再生が課題となっていた1998年には、当時の橋本首相が所得税減税を含む2兆円の「特別減税」を実施したが、首相の発言が「恒久減税」に意欲を示したと受け取られて迷走。7月の参院選で惨敗して退陣を迫られた。
自民内では「税は鬼門だ」との見方が根強く、森山総務会長が「過去の検証結果もよく見ることだ」と15日に記者団に語ったのもこのためだ。

22日には衆院長崎4区と参院徳島・高知選挙区の両補欠選挙が投開票を控えていることから、立憲民主党の泉代表は20日、「茶番だ。減税を選挙目的に使っている」と党本部で記者団に語気を強めた。
日本維新の会の音喜多政調会長は記者会見で、「(与党の税制調査会で)年末に検討を始めるのでは、緊急の経済対策として明らかに遅すぎる」と述べた。国民民主党の榛葉幹事長は「期間限定では納税者はがっかりする。選挙にむしろマイナスでは」と語った。

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