警察は30日、業務上横領の疑いでひだか漁協の職員春日公美容疑者48歳を逮捕しました。
2016年の11月に漁協が管理する金融機関の顧客の口座から2度にわたって合計100万円を横領した疑いです。
日高の新冠町。事件の舞台となった節婦地区は人口およそ550人の小さな港町です。
■渡辺恵美子さん:
「なんとかしていい形にはもっていって欲しいと思います南無釈迦牟尼仏南無釈迦牟尼仏」渡辺恵美子さん68歳。漁師だった夫の正さんを17年前に亡くし、一人で暮らしています。2006年6月、正さんが船長として乗っていた漁船に別の漁船が衝突。
正さんは海に投げ出され、当時56歳という若さで亡くなりました。
■渡辺恵美子さん:
「生命保険と、あと相手からのほうのお金と。」
渡辺さんの元に入った多額の遺産。その大事なお金をめぐり、4年前、とある異変に気付きました。
■渡辺恵美子さん:
「残高がかなり減っていくのが早いし2枚あった通帳もかなりお金の移動が激しいんだ。」
■渡辺恵美子さん:
「ちょっとこれ見てください。娘と2019年から2人して一緒に調べて。」
娘のあやのさんと1年半ほどかけて調べたところ、覚えのない取引がおよそ4000万円分あったといいます。
一体、なにが起きているのか。
背景にはこの町に根付いていた慣習がありました。
■渡辺恵美子さん:
「ずっとみなさん通帳預けていたねほとんど(の人)」
渡辺さんを含む漁業関係者の多くは、漁協に併設された金融機関=マリンバンクを利用しています。
中には昔から漁協に通帳を預けていた家もあるというのです。
■渡辺恵美子さん:
Q(組合に通帳を預けることに)違和感はなかった?
「なかった、なんも組合の通帳は。」
娘のあやのさんが漁協に説明を求めに行くと、対応したのは渡邊さんも家族ぐるみで付き合いのある春日容疑者でした。
■春日容疑者「契約してるの積立保険」「ほんとごめんほんとごめん。
わたしが悪いんだ」勝手に通帳のお金を運用していたと話したのは、漁協職員で当時マリンバンクの担当だった、春日公美容疑者。
漁協関係者によると、春日容疑者は預かった通帳を1人で管理していたといいます。
春日容疑者の説明によると2000万円を名義人不明の定期預金に、さらに1500万円を無断で作った渡辺さんの息子名義の口座に移したといいます。
そのうち300万円を自分名義の積み立て預金に、100万円を渡辺さんの娘と孫の名義でそれぞれ定期預金したということです。
目的について、春日容疑者は…
「わたしが勝手なことをしたの」「いろんな人たちを見てきて相続とかも見てきて、あや(渡辺さんの娘)に一番残してやりたいと思ったの」あやのさんのために資産運用していたと言い張る春日容疑者。
他にもおよそ300万円が無くなっていたことについて、横領していたのではないかと問い詰めると。
■春日容疑者:
「だってやってないけどほんとにやってないよ」「信じてって言ったって信じてもらえないのもうってなったら、会社に迷惑かけてみんなに迷惑かけてそしてわたし滅ぶしかないでしょう!」
このやり取りの2週間後、漁協の幹部を交えた話し合いも行われました。
■漁協幹部:
「お互いに預けるほうも預かったほうもちょっと異常に感じちゃう」漁協は問題についてあくまで個人間のトラブルだと主張。
その上で客の通帳を管理していたという服務規程違反で春日容疑者を1か月の停職処分としました。
横領の疑いについては。
■漁協幹部:「調べました。でも出てきませんなにも」「私どもとしては基本的に訴訟を起こしていただくことでしか対応できない。」
春日容疑者が無断で作った口座や積立は解約され、元に戻されました。
しかしおよそ300万円は引き出されたまま返ってきていません。
■渡辺恵美子さん:「色んな形で信じていてすごく仲良くしていて信じていたからね。」「まず謝罪してほしいよ。」
お金は一体どこへ消えたのか…HTBは先月、春日容疑者を直撃しました。
■廣瀬美羽記者:
「すみません。春日さんですか。HTBの者なんですけど、漁協でお金のトラブルがあったと伺いまして…」
■春日公美容疑者:
「弁護士さん通して下さい」
■廣瀬記者:
「私たち個人で…」
■春日公美容疑者:
「弁護士を通して下さい。お願いします」
渡辺さん親子は警察に被害届を提出。
そしてきょう、春日公美容疑者を30日、逮捕しました。
亡き夫の保険金は戻ってくるのか。
渡辺さんの眠れぬ夜はいまも続いています。
警察によりますと渡辺さんの口座には2016年より前にも不自然な現金の引き出し履歴が1000万円分以上あったということです。
また警察は余罪や漁協の組織的な関与がなかったかも含め調べています。