【山梨夫婦殺害事件】被告人母の調書で明かされた生い立ち「実父は逮捕」「怒鳴る養父」「レールを少しでも外れると塞ぎ込む」

2021年に山梨県甲府市で50代の夫婦を殺害し、その住宅に火をつけ全焼させたとして殺人や現住建造物等放火などの罪に問われた当時19歳の遠藤裕喜被告(21)の裁判員裁判が甲府地裁(三上潤裁判長)で続いている。11月13日には弁護側証拠として被告人の母親の調書が読み上げられた。
遠藤被告は2021年10月の深夜、甲府市の住宅に窓ガラスを割って侵入し、住人のAさん(55=当時)、その妻Bさん(50=同)を斧で多数回殴打した上、刃物で複数回刺して殺害。遠藤被告は夫妻の長女・Cさんと同じ高校に通っていたが、次女・Dさん(14=同)の頭部にも斧を振り下ろし頭部裂傷の傷害を負わせた。その後、住宅を放火し全焼させたとされる。検察側は被告がCさんに好意を抱き、これが実らなかったことから恨みを募らせ犯行に及んだと主張しており、弁護側は被告が当時心神耗弱状態にあったと主張している。
遠藤被告の母親は、二度の結婚を経験している。調書で明かされた内容によれば、被告は、ひとりめの父・実父の逮捕で仲間外れを経験し、ふたりめの父・養父との暮らしで母親への暴力を目の当たりにしてきたという。
母親自身が法廷に姿を見せて証言しているわけではなく、母親が取り調べに語った調書を、弁護人がゆっくりと読み上げていく。それによると、母親は一度目の結婚後、夫と幼い被告とともに、夫の実家で暮らしていたが、義理の母との折り合いが悪く、3人で家を出て新居に移り住んだ。ところが被告が小学校2年生の頃、実父が給湯器の窃盗で逮捕されてしまう。実父は執行猶予判決を受けて自宅に戻ってきたが、事件は近所に知れ渡っていた。これが「被告にも影響した」と母親は言う。被告も泥棒のレッテルを貼られてしまった……と母親は感じていたようだ。
「友達の保護者が、被告と『遊ぶな』と言い、友達と遊べなくなった。親友だった子供の親が『被告がニンテンドーDSのソフトを盗んだ。ソフトのケースが敷地に落ちていた』と怒鳴り込んできたことがあった。私は被告に何度も問いただしたが、彼は『絶対に盗ってない』と言い、家中ひっくり返すほど探したがソフトは出てこなかった。あのときのことは、被告と友達を遊ばせないために被告に濡れ衣を着せようとした親の画策ではないかと今でも思う」(母親の調書)
こうした調書読み上げの間、被告は初公判のときのように、両手で耳を塞ぐなどしていた。
小学校を休みがちになった被告だったが、のちに別の学校に越境通学してからは「学校や友人関係が被告にとって一番よかったようで、学校のことをよく話してくれるようになった」(同前)という。だが一方で、母親と実父の関係は冷え切っていた。被告の実父は「泥棒をしたことで近所に白い目で見られたことを負い目に感じていたようで遠慮がちになった」ことや収入が減少したことから、夫婦の会話がなくなり、離婚に至る。そしてすぐに、母親はパート先で出会った男性と結婚。この男性が養子縁組により被告の養父となる。そして被告が小学6年の頃、妹が産まれ4人暮らしとなった。

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