ニュース裏表 伊藤達美 局面打開に「出直し解散」のススメ 「政治とカネ」問題めぐり高まる国民不信、岸田首相が自ら「解散」し結果責任を

「政治とカネ」の問題をめぐり、国民の政治不信が高まっている。
岸田文雄首相は岸田派(宏池会)の解散に踏み込んだほか、自ら本部長を務める自民党の「政治刷新本部」で、派閥のあり方や、政治資金規正法の改正の方向をまとめる。
しかし、これによって国民の批判が収まるかといえば、そうはならないだろう。
捜査の結果、起訴されなかったとしても、政治資金パーティーの収入を収支報告書に記載しなかった事実は変わらない。法的責任を免れたとしても、その政治的・道義的な責任からは逃れられない。
そんな政治家が、いくら〝改革案〟を唱えても、信用されないのは当然だ。
他の政策も同様だ。岸田首相は昨年来、「先送りできない課題の解決に取り組む」と繰り返し表明してきた。確かに、わが国には多くの課題が山積している。ただ、信用のない政治家がどんな政策を唱えても説得力がない。まさに「信なくば、立たず」だ。
この局面を打開するには、もはや「出直し解散」しか方法はないのではないか。
ただ、来年度予算を成立させないまま解散すると、国家運営に支障が生ずる。予算執行に不可欠な法案や、国民生活に支障が生ずる「日切れ法案」の処理も必要だ。
それらを考慮すると、予算成立後になってしまうのはやむを得ないかもしれないが、できるだけ早く国民の審判を仰がなければ、新たなことを決められない「政治の機能不全」が続くばかりだ。
過去には、「行政改革法案等の成立後、解散」との与野党合意に基づいて行われた、いわゆる「田中角栄元首相有罪判決」解散(1983年)といった例もある。与野党が人心一新の必要性を認めれば、予算審議を前倒しすることも可能ではないか。
自民党内には「与党が勝てない時期に解散する必要はない」との声があるかもしれないが、本来、「解散」制度は民意を反映すべき衆院が、実際の民意と異ならないようにするための制度だ。与党が選挙に勝てないからと言って先延ばししてよいものではない。
あるいは、自民党総裁を交代させたうえで解散すべきとの考えもあるかもしれない。
だが、新総裁で解散して負けた場合、その責任を新総裁に押し付けるのか。やはり、現在の状況を招いた岸田首相が解散し、結果に応じて責任を取るのが常道ではないか。
解散が見えれば、疑惑を受けた議員の釈明も真剣味を帯びざるを得ない。有権者の心に響かなければ、国会に戻ってくることはできない。いい加減な説明はできなくなる。
あとは、国民がどう判断するかだ。野党に期待して政権交代させるか。自民党の立ち直りを期待するか。「国民の審判」によって、次の政治の流れが決まっていく。それが憲法の予定する議会制民主主義ではないか。 (政治評論家・伊藤達美)

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