東京電力福島第一原子力発電所からの処理水の海洋放出を巡り、岩手県内自治体に寄せられた中国からとみられる迷惑電話が、30日までに少なくとも382件に上ることが読売新聞の取材でわかった。内陸の自治体のほか、水族館など「海」に関わる民間施設にも不審な電話が相次いでおり、関係者は対応に苦慮している。
大船渡市では、処理水放出が始まった翌日の25日以降、中国の国番号「86」で始まる電話が330件以上確認された。いずれも片言の日本語や外国語で何かを訴えかける内容で、「バカヤロー」などとまくし立てる一幕もあったという。200件を超える迷惑電話が集中した25日には、代表電話が一時つながりにくい状況となった。炭釜秀一財政課長は「こちらに何をしてほしいのかが分からず、手の打ちようがない」と困惑する。
花巻市では25~28日、国番号「86」で始まる電話が14件寄せられ、処理水放出に抗議する内容の日本語の音声が流れたという。担当者が話しかけても反応はなく、「切らせていただきます」と告げた上で電話を切った。奥州市でも28日、中国語の電話が2件あり、財産運用課の担当者は「(自治体の)リストを見て片っ端からかけているのでは」と推測する。
こうした迷惑電話は、宮古、北上、遠野、雫石の各市町でも確認された。
電話は沿岸部の民間施設でも相次いでいる。久慈市の地下水族科学館「もぐらんぴあ」では25日、中国から着信があり、スタッフが出ると爆音とともに笑い声が聞こえたという。26日夕の電話では「どうして処理水を海洋に流したのか」「あなたたちはバカなのか」などの自動音声が流れた。電話を受けた女性は「どうしてうちなのか。嫌な気持ちになる」と憤りをあらわにする。
山田町の「鯨と海の科学館」でも、25、26の両日、中国からの電話が4件相次いだ。発信者はたどたどしい日本語で「バカヤロー」と叫び、一方的に電話を切ったという。
県警によると、中国からとみられる迷惑電話について29日までに8件の相談が寄せられ、NTT東日本が設置した相談窓口(0120・325・263)の利用などを呼びかけている。