国立感染症研究所は12日、性感染症の梅毒と診断された患者が、今年に入り1万人を超えたと発表した。現在の調査方法となった1999年以降、初めて1万人を上回った昨年より、約2か月早いペースとなる。専門家は「早期に治療をすれば治る」として、感染が疑われる人らに対し、迷わず検査を受けるよう呼びかけている。
梅毒は、主に性的接触で感染する。性器や口、肛門など感染した部分の潰瘍やリンパ節の腫れ、全身の発疹などの症状が出る。早期に抗菌薬で治療すれば、完治する。
感染研がまとめた感染症発生動向調査(速報値)によると、今年初めから今月3日までに報告された梅毒患者は、昨年同期より約2000人多い1万110人にのぼった。都道府県別では東京が2490人と最多で、大阪(1365人)、愛知(590人)、福岡(588人)と続き、都市部で多かった。
梅毒の患者数は、2013年に1000人を超えて以降、増加傾向が続き、21年は7978人、昨年は1万3228人(速報値)と、過去最多の更新が続いている。男性は20歳代から50歳代を中心に報告されており、女性は20歳代前半に多い。
患者が増えている原因ははっきりしないが、専門家からは、従業員への検査体制が不十分な性風俗営業や、SNSを通じて出会った相手との性交渉の増加が影響しているとの指摘もある。
梅毒の感染を調べる血液検査は、ほとんどの医療機関や一部の保健所で受けられる。 三鴨 広繁・愛知医大教授(感染症学)は「感染を広げないため、新たなパートナーができた時や不特定多数との性的接触があった時のほか、気になる症状があれば、すぐに検査を受けてほしい」と話している。