東京電力福島第一原発事故による帰還困難区域の特定復興再生拠点区域(復興拠点)で、解体工事の作業員が放射性物質に汚染された可能性のある鉄くずなどを無断で持ち出し、売却していたことが、環境省への取材でわかった。汚染廃棄物が帰還困難区域外で再利用された恐れがあり、同省が調査している。
持ち出しが判明したのは、福島県大熊町の図書館・民俗伝承館の解体工事で、ゼネコン大手の鹿島などの共同企業体(JV)が、国から受注した。下請けの土木工事会社が今年初め頃から、作業していたところ、複数の作業員が、鉄くずや銅線を無断で帰還困難区域外の業者に売却したという。鹿島から同省に報告があった。
同省によると、建物解体で出た廃棄物は仮置き場に集められた後、放射能濃度が1キロ・グラムあたり10万ベクレル超の場合は中間貯蔵施設に、10万ベクレル以下は専用の処分場に搬入される。100ベクレル以下などの基準を満たせば再利用できるが、基準を下回るか測定しなければならない。
汚染廃棄物の投棄は放射性物質汚染対処特措法で禁じられており、国直轄の除染事業で、汚染された土壌や廃棄物の不法投棄が問題になったことがある。伊藤環境相は19日の閣議後記者会見で、「誠に遺憾。業者への指導・監督を徹底する」と述べた。鹿島は取材に「発注者や警察に相談しており、対応中だ。個別事案のため、詳細はコメントを控える」としている。