財源確保は茨の道 高齢者と現役 世代間対立も

岸田文雄政権は看板政策「次元の異なる少子化対策」を巡り、児童手当などの給付拡充のメニューを先出しする一方、財源の裏付けとなる負担の制度設計は先送りしてきた。社会保障の歳出改革や社会保険料の引き上げで捻出する方向だが、財源確保はいばらの道だ。
「子育て世代の所得向上が重要であり、最低賃金を含めた賃上げなどに全力で取り組んでいく」
2日のこども未来戦略会議で、首相はこう述べた。少子化対策の財源を巡る「キックオフ」(出席者)の会議にも関わらず、負担増に関する首相の言及は乏しかった。
少子化対策の財源となる「支援金」は1兆円規模と見込まれ、国民1人当たり月500円程度の負担増になるとの試算もある。だが、首相は「国民に実質的な追加負担を求めない」と繰り返してきた。社会保障の歳出改革を徹底することで、負担増を帳消しできるという青写真を描く。
ただ、社会保障の支出の大半は高齢者向けだ。高齢化による伸びを抑制するため、毎年1千億~2千億円の歳出改革を行ってきている。
さらに改革を進めれば、痛みを受け止める高齢者と恩恵を享受する現役の世代間対立を生みかねない。医師会も「財源確保がないまま歳出を削減すれば、医療・介護の質が落ちかねない」(東京都医師会の尾崎治夫会長)と牽制する。
衆院解散・総選挙も取り沙汰される中、政府・与党は負担を巡る議論は避けたいのが本音だ。首相は月内に策定する経済対策に合わせて「減税」を打ち出しており、環境はより複雑になった。財務省幹部は「目先の支持率を追って、財源議論を後回しにしてきたつけが回ってきている」と話す。(竹之内秀介)

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