有期労働契約から無期契約に転換できる権利を得る直前に長崎大から雇い止めにされたのは不当と訴えた訴訟で9月に福岡高裁で和解したベルギー人の医学部助教(医学英語など)、リュク・ロースフェルトさん(63)=長崎県時津町=が2日、4年7カ月ぶりに大学に出勤し、職場復帰を果たした。支援した労働組合員や弁護士から祝福の花束を受け取り、笑顔で大学の門をくぐった。
国は2013年4月施行の改正労働契約法で、同月以降に結んだ有期契約が通算5年を超える場合、労働者が無期契約への転換を申し込む権利を得る「無期転換ルール」を定めた。ロースフェルトさんは11年3月に3年契約で採用され、その後契約を2回更新したが、無期転換の権利を得る直前の19年2月末で雇い止めにされた。
ロースフェルトさんが助教としての地位確認を求めた訴訟で1月の長崎地裁判決は、ロースフェルトさんが形式的な契約更新手続きで通算8年勤務していたことを踏まえ「引き続き契約が更新されると期待したことに合理性がある」などと判断し、請求を認めた。
控訴審は9月15日、大学側が契約更新時の対応について遺憾の意を表し、ロースフェルトさんが定年(65歳)まで無期雇用の助教として勤務するなどの内容で和解が成立した。
この日、ロースフェルトさんを支援した長崎大教職員組合の桑野和可(かずよし)執行委員長(水産学部教授)は「職場復帰は多くの職員の励みになり、リュクさんの熱意のこもった授業を受けられる学生の力になる。組合としてサポートできて良かった」と語った。
ロースフェルトさんの代理人を務めた中川拓弁護士は「有期雇用の労働者が勝訴して職場復帰を果たすのは本当に大変なこと。『大学でまた学生に教えたい』というリュクさんの熱意があったから、職場復帰が勝ち取れた」と語った。
ロースフェルトさんは少し不安そうな顔も見せたが、膨大な訴訟資料を翻訳するなどして支えた妻美和子さんが「Be strong(しっかり)」と声をかけると、「Victory(勝利)」と答え、胸を張って門をくぐった。【樋口岳大】