原告ら落胆と怒り「一刻の猶予ない」水俣病訴訟で「国・熊本県も控訴」1審判決に不服

水俣病の症状に苦しむのに、特措法の救済から漏れた人たちが、国や熊本県、原因企業の「チッソ」を訴えていた裁判。大阪地裁は9月27日、「原告128人全員が水俣病に罹患している」と認め、被告3者に賠償を命じる判決を出しましたが、「チッソ」に続き、国と熊本県も10月10日付けで控訴しました。控訴を受けて弁護団と原告は大阪市内で会見を開き次のように話しました。 (原告の前田芳枝さん) 「怒り心頭です。ため息も出ました。原告や被害者はみな高齢になり、裁判途中で亡くなった方もいます。一刻の猶予もありません。国や県には同じように控訴しないで、患者切り捨ての誤りが正された現実を受け止め、被害者に向き合い、早期救済に向けて動いてほしかったです。私たちが死ぬのを待っているのか、切り捨てられているのかと感じます。私たちはもう前を向き、くじけずに頑張っていくしかありません。絶対に負けられません。頑張ります」 (原告の本良夫さん) 「だから67年と長い年月がたっても解決していない。私はものすごく憤りを感じて仕方ない。問題解決の責任は国・熊本県・チッソにある水俣病患者の命と身体の痛み、つらさ、心の苦しさが少しでも楽になるように一刻も早く救済をして、終わらせていただくようお願いします」 ▼救済措置も“対象地域の線引き”など受けられない人続出 裁判の概要を振り返ります。 水俣病をめぐっては、2009年に成立した特措法で、未救済の被害者に一時金などを給付するという救済措置が設けられましたが、▽期限までに申請できなかった人や、▽対象地域の線引きなどから救済を受けられなかった人が続出しました。 現在は関西などに住み、手足のしびれなど水俣病の症状に苦しんでいるものの、特措法の救済から漏れた128人は、国と熊本県、原因企業の「チッソ」に賠償を求め、大阪地裁に提訴しました。 ▼「原告全員が水俣病に罹患」「請求権消滅の原告はいない」大阪地裁判決 大阪地裁は9月27日の判決で、原告らの症状の原因は、熊本や鹿児島に住んでいた時期に魚介類を継続的に食べ、メチル水銀を摂取したこと以外では説明できないとして、「原告全員が水俣病に罹患している」と認定。 また、国側の「原告らの賠償請求権は消滅している(除斥期間を過ぎている)」という主張については、メチル水銀の摂取から長期間経った後に症状が現れることが少なくない点などを踏まえ、「除斥期間の起算点は、原告らが神経学的検査で水俣病と診断された時点である=賠償請求権が消滅した原告はいない」と判断。 国・熊本県・チッソに対し、原告128人全員に1人あたり275万円を支払うよう命じました(122人は国・熊本県・チッソが連帯して賠償責任/6人はチッソのみが賠償責任)。 原告らは「画期的な判決」と評価。東京に出向いて環境省の担当者とも直接面会し、控訴しないよう強く要請していましたが、大阪地裁によりますと、10月10日付けで国と熊本県が控訴したということです。 この裁判をめぐっては、すでに10月4日付けで、チッソも控訴しています。

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