「いつでも・どこでも・誰でも」クマに遭遇する状況、秋田市の住宅街5人けが…前足で窓たたく様子も

秋田市の住宅街で9日、クマによる人身被害が連続して発生し、計5人がけがを負った。一戸建てが立ち並ぶ休日の閑静な地域に突然現れたクマに対し、住民が口々に不安を訴えた。秋田県は「いつでも、どこでも、誰でも」クマに遭遇する状況だと改めて強調し、警戒を呼びかけている。
午前9時10分頃、秋田市の新屋寿町と新屋南浜町で男女4人が相次いでクマに襲われた。秋田中央署と市消防本部によると、襲われたのは、いずれも同市に住む78歳の女性と67歳、76歳、80歳の男性。4人はひっかかれるなどして頭や顎、左耳などにけがを負った。このほか、同市の80歳代男性がクマから逃げる際に転倒し、額と鼻に擦り傷を負った。
襲われた一人の80歳の男性は、左後頭部と左腕にけがをした。男性によると、自宅のテレビアンテナを修理中、畑近くで椅子に座って休憩していた時に、いきなりクマが左腕にぶつかってきたという。男性は「足音や鳴き声は聞こえなかった」と振り返り、「40年近く住んでいるが、クマが出ることはなかった」と不安げな表情を浮かべた。
別の男性会社員(65)は「キャー」という叫び声で自宅から外に出ると、家の駐車場で頭や左腕が血まみれになった女性が回覧板を抱えて倒れていたという。
その直後、自宅敷地から山へ走り去るクマを目撃した。男性は「血だらけの人にかける言葉も失った」と驚いた様子だった。
窓をクマにたたかれた人も。別の男性の自宅庭には午前9時頃、クマが侵入し、ガラス窓に何度か体をぶつけ、立ち上がって前足でも窓をたたいたという。男性は「四足歩行をしている時の体長は80センチくらいだったが、立ち上がるともっと大きく見えた」と話した。県警に電話した後、2階に避難したといい、小学2年の息子は「本当に怖かった。涙が出た」と振り返った。
猟友会メンバー襲われる

このほか、9日午後3時40分頃には、秋田市仁別の山林で、クマの駆除をしていた地元猟友会メンバーの男性(73)がクマに襲われた。男性は頭や両手などをかまれたり、ひっかかれたりして重傷を負った。
秋田東署などによると、男性が別のメンバーと2人で警戒中、木に登る親子とみられるクマ3頭(1頭が体長約1メートル、2頭は同50センチ)を発見。猟銃を発砲したが親グマに襲われたという。
県自然保護課によると、今秋はクマのエサとなるブナの実の大凶作が予想されている。今後、冬眠に備えてエサを求めるクマの行動がさらに活発になる可能性があり、同課の斎藤寿幸課長は「私たちの生活圏のすぐそばにクマがいると考えてほしい。いつでも、どこでも、誰でもクマに遭遇する可能性がある」と注意を呼びかけている。
秋田市の穂積志市長も10日、「山菜採りなどの入山時のほか、朝夕の散歩時、登下校時にも、十分注意して」とコメントした。
県警地域課によると、今年のクマの人身被害は36人となり、過去最多を更新している。目撃件数も9日時点で1788件と、昨年1年間の727件を大きく上回っている。

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