10月2日、天皇皇后両陛下と長女の愛子さまは、日本赤十字社の本社をご一家で初めて訪問されました。このニュースについて、日本テレビ客員解説員の井上茂男さんに聞きました。
最初に、ご一家は殉職した救護員の慰霊碑に白いユリの花束を手向けられました。その後、関東大震災の企画展を見学し、天皇陛下は、当時の細かい救護活動の記録に「こんな資料もあるんですね」と話され、皇后さまと愛子さまは、救護所の数について「何か所くらい?」とほぼ同時に質問していました。また愛子さまは、たびたび質問し、重症度で治療の優先順位を決めるトリアージのタグを見て、「今でも紙を使うんですか」などと尋ねられていました。
――井上さん、このニュースをどのように受け止められましたか?
ご一家3人でのお出かけは、9月の「日本伝統工芸展」などこれまでにもいろいろあり、愛子さまが美術や古典にご関心が強いことを感じてきました。そんな中でも、今回のような「慰霊」を伴う企画展へのお出かけは初めてで、社会問題への関心をしっかりお持ちなのだと思いました。
殉職した日本赤十字社の職員の慰霊に当たって、髪をアップに、黒い服をお召しになり、愛子さまはもうすっかり成年皇族の落ち着きです。大学4年生で、21歳の愛子さまが、お一人での〝公務デビュー〟される日も近いと思いました。
ただ、こうして愛子さまの存在感が高まる一方で、改めて感じるのは、愛子さまの幼少期から言われてきた「皇位の安定継承」や「女性皇族の結婚後の活動」についての検討に動きがないことです。愛子さまや佳子さまたちには、先が見えない霧の中の状態が続いています。どういう形にするのか、もう本当に答えを出さなければならない〝限界の時期〟に来ていると思いました。
【井上茂男(いのうえ・しげお)】
日本テレビ客員解説員。皇室ジャーナリスト。元読売新聞編集委員。1957年生まれ。読売新聞社で宮内庁担当として天皇皇后両陛下のご結婚を取材。警視庁キャップ、社会部デスクなどを経て、編集委員として雅子さまの病気や愛子さまの成長を取材した。著書に『皇室ダイアリー』(中央公論新社)、『番記者が見た新天皇の素顔』(中公新書ラクレ)