政府が東京電力福島第1原発から出る処理水の放出を決定したことを受けて、各地の知事からは、漁業者の懸念を払拭するとともに国内外の理解を得るため、政府の対応を求める声が相次いだ。
東日本大震災の被災地である岩手県の達増拓也知事はコメントで、県の水産業は不漁の影響を受けていると説明した上で、「科学的根拠に基づく丁寧な説明や万全な風評対策など、必要な取り組みをしっかり進めてほしい」と訴えた。宮城県の村井嘉浩知事も県庁で取材に対し、風評被害対策に関し「全国の皆さんに福島や宮城、茨城の水産物を食べていただくようお願いしなければならない」と語った。
大阪府の吉村洋文知事は府庁で「日本全体で風評と闘う姿勢を行動で示すことが大事だ」と指摘。47都道府県庁内の食堂で福島県産魚介類を使った食事を提供し、知事が食べることを全国知事会で提案する考えを示した。
処理水放出に対しては、日本の周辺国で不安の声が出ている。群馬県の山本一太知事は県庁で取材に対し、「海外への影響も想定した上で政府が必要だと判断したと思うので、それ自体は理解している。ただ、しっかりと説明することが大事だ」と語った。一方で、静岡県の川勝平太知事は記者会見で「地元の納得抜きのまま処理水が放出されるので懸念を持っている」と述べた。
香港政府が処理水放出を受けて水産物を禁輸する方針を示している10都県に含まれる埼玉県。大野元裕知事は記者会見で、県が海に面していないとして「明らかに何の根拠もない」と指摘し、撤回を求めた。
[時事通信社]