京アニ公判 逆ギレから「疲れた」法廷にため息 青葉被告、集中質問きょう最終日

36人が死亡し32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第9回公判が、25日午前10時半から京都地裁で開かれる。7回連続で集中的に実施される被告人質問の最終日で、裁判員による質問も行われる見通しだ。20日の前回公判では遺族らが直接質問したが、被告が明確に謝罪することはなく、逆に「京アニは不問なのか」と反抗的になる場面もあった。持論をとうとうと語る被告に遺族らは顔をしかめた。
遺族へ視線向けず
被害者の中で最初に法廷に立ったのは、「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」などで総作画監督を務め、作画の大黒柱として活躍した寺脇(池田)晶子さん=当時(44)=の夫。「ふーっ」と大きく息をついた後、「本当はたくさんのことをあなたに聞きたいが、制約やルールがあるようなので内容を限って質問します」。被告を見据えて質問をぶつけた。
--池田晶子は今回の事件のターゲットでしたか。池田をご存じなかったですか
被告「作画監督を務めていた認識は少しはあったと思うが、京アニ全体を狙う認識だったため、誰か個人を、という考えはなかったです」
--事件前、放火殺人をする対象に家族、特に子供がいるということは知っていましたか
被告「申し訳ありません。そこまで考えなかったです」
傍聴席に戻った夫は、静かに鼻をすすった。別の遺族とみられる人の中には、失った大切な家族と重ね合わせたのか、涙をぬぐう姿も。被告が夫の方へ視線を向けることは最後までなかった。
しおらしさ一転
事件のあった年に入社した女性社員=当時(22)=は、被告がガソリンをまき火をつけた1階のらせん階段付近で遺体が見つかった。母親は毅然(きぜん)とした態度で被告に問いかけた。
--ガソリンをまいたとき「死ね」と。ガソリンに火をつけたのは娘を含めた全員に向けてですか。「死ね」というのは本心ですか
被告「その通りです」「その時の本心で間違いございません」
--娘は事件があった年に入社したばかりでした。あなたが盗作されたと主張する作品が制作されたあと、入社した社員がいたことは考えなかったのか。焼け死んでいいと思ったのですか
被告「すみません。そこまで考えていませんでした」
これまでの公判で自身の小説の内容や、「闇の人物のナンバー2」について饒舌(じょうぜつ)に語ったときとは打って変わり、しおらしく答えた被告。しかし、質問者が遺族本人ではなく代理人弁護士に代わると、〝逆ギレ〟や反論めいた言葉をまくしたてる場面もあった。
--人が死ぬと分かっている中で被害者のことは考えなかったのか
被告「逆に聞くが、京アニが作品をパクったときには何か考えたのか」
裁判長「あなたが質問する場ではありません」
被告「パクりや『レイプ魔』と言われたことに京アニは良心の呵責(かしゃく)はなく何も感じず、被害者としての立場だけ述べてどう思うのか」
「追及厳しくなって…」
京アニが「自分の小説をパクった」と強く主張した被告。ただ、匿名掲示板「2ちゃんねる」では事件前、「ハルヒの文章をぱくっていたころが懐かしい」などと被告が書き込んでいたこともあった。ある遺族は、この部分に疑問を呈した。
--ここ(の書き込み)でいうパクりと京アニの「パクった」は何が違うのか
被告「ハルヒは教科書代わりだった。亜流と言ってはなんだが、学んでいく過程でまねは必要不可欠だと思う」
--パクりという意味では同じでは
被告「京アニの場合、(自分の作品を小説コンクールで)落としたにもかかわらず流用して放映したり、監督がブログで発信したりしていた」
最後に被告に向き合った代理人弁護士は、この日の公判で被害者に対する思いを問われ、被告が逆ギレした点について厳しく追及した。
--(良心の呵責についての)質問になぜ答えなかったのか
被告「自分はこういう立場でどんな刑だろうと罰は受けなければならないが、京アニがしてきたことは全部不問になるのか」
--京アニに今、憤りがあるのですか
被告「あります」
最後は食ってかかるように答えた被告。「昨日は眠れましたか」と尋ねる自身の弁護人に対し、「寝ておりません」「(これまでの弁護側や検察側の質問より)やはり追及が厳しくなった。疲れている」と訴える被告の姿に、遺族らは冷ややかな視線を向けていた。
検察は初公判で事件の動機の形成に関し、「うまくいかないことを他人のせいにしやすい被告のパーソナリティーが要因」などと指摘している。

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