『過大に支給した65万円を返還してください』大阪市から突然届いた文書に市民困惑 計算を誤っていた市は取材に「公平性から納付求める。納付期間は変えない」

「過大に支給していた65万円の返還をお願いします」。3人の子どもをもつ女性の家に大阪市から突然文書が届きました。この65万円は市の計算ミスによるものだということです。ただ、支払い期限は納入書が届いた約1か月後。市の一連の対応に、女性は「生活ができなくなる」と困惑しています。
放課後デイでの利用額「約65万円」の支払い求める文書が届く

大阪市に住む湯川さん。夫と3人の子どもの5人家族です。

高校生の長女は自閉症で、学校が終わるとほぼ毎日、放課後等デイサービスに通っています。
(湯川さんの娘)「(Q放課後デイはどんなところ?)楽しいところ。みんなが友だちになってくれるところ」
放課後デイは障がいのある子どもなどが放課後や長期休暇に利用できる福祉サービスで、同年代の友達もでき、娘の“居場所”になっているといいます。
(湯川さん)「ちょっと落ち着きました。みんなと楽しくやれているので、友だち関係がすごく広がったと思います」

しかし、この放課後デイの利用をめぐって、あるトラブルが起きているといいます。それは今年6月下旬に届いた1通の文書でした。
(湯川さん)「これが大阪市から届いたんですけど、66万円支払ってくれというのがきたんです。納得がいかなかったのと怒りでうわっとなってしまいました」

その文書の内容は…。
【文書より】『過大に支給していた給付額についてご返還いただくことをお願いする』

文書は放課後デイでの利用額約65万円の支払いを求めるものでした。
約65万円は上限額の区分の誤りによる差額分

放課後等デイサービスは、利用するにあたり国や自治体が9割を負担し、残り1割を湯川さんら利用者が負担することになっています。利用者が1か月で負担する上限額には3つのパターンがあり、所得によってかかる税額に応じて、0円(生活保護・低所得)・4600円(一般1:所得割28万円未満)・3万7200円(一般2)に分けられています。

湯川さんの場合、上限額は4600円と通知されていましたが、それは誤り。実際は3万7200円だったというのです。大阪市からの文書は、誤っていたことによる差額分、2年間で計約65万円の支払いを追加で求める通知でした。
数年前に金額について間違いないか役所に確認 『市の計算ミス』だが支払い期限は猶予なし

通知内容は理解しつつも湯川さんが納得できないのがこの上限額について。実はもともと湯川さんの上限額は3万7200円だったからです。ところが3年前に突然、大阪市から4600円に変更となったと連絡があり、当時、何度も「間違いではないか」と役所に確認したといいます。
(湯川さん)「『4600円ですけどあってますか?』と確認して、(役所の人に)『あってますよ』って言われたので、そこで安心してしまったんです。信じられなくなりました、大阪市が」

大阪市によりますと、今回の追加の支払いは所得区分の計算に誤りがあったことが原因だといいます。

その上、大阪市のミスであるにもかかわらず、支払いの期限は納入書が届いてから約1か月あまり。8月末なのです。
あまりにも急な通知。湯川さんは支払いに頭を悩ませています。
(湯川さん)「生活できないです。1か月で65万円も払ったら。期間を延ばしてほしいですかね」

娘のほか、小学生の子ども2人を育てる湯川さんにとって、追加の支払いはとても大きいのです。最初から3万7200円が上限だと正しく通知されていれば、通う回数を減らすなどして出費を抑えていたと訴えます。
(湯川さん)「初めからわかっていたらセーブできるけれども、あとから言われたらできないので、怒りしかないです」
同様に追加の支払いを求められている人は77人

大阪市によりますと、湯川さんと同じように、追加で支払いを求められている人は77人いるといいます。
田中さん(仮名)もその1人。突然、約40万円の支払いを求められ、困惑しているといいます。
(田中さん・仮名)「パニックです。ええ加減やし、こっちのことを一切考えずに。間違えたものは仕方ないから払ってなみたいな感じで、優しくないですよね」

同様のサービスでのミスはほかの自治体でも起きています。千葉県市川市では、市側のミスであることを理由に、利用者側に追加の支払いは求めないなど自治体によって対応が分かれています。
大阪市「負担の公平性から納付を求める」「納付期間は一律みなさん一緒」

大阪市の対応に納得のいかない湯川さん。8月7日、直談判するため市役所を訪れました。しかし、直接、大阪市に訴えても話は平行線のままでした。
(湯川さん)「我々(大阪市)はミスをしたけれども、『利用者に全額負担してもらいたい』という。がっかりです」

納得できない市民がいる中で何か策はないのか…。取材班は大阪市の担当者を直撃しました。
(大阪市福祉局 福原範彦障がい支援課長)「今回誤ってしまった方以外のサービスをご利用されている方々との負担の公平性がありますことから、納付をお願いするという判断をしているところでございます。なかなかご納得いただけるようなケースではないというのは重々承知をしております」
市はすべてのサービス利用者の公平性を保つためとしました。その上で、次のように話します。
(大阪市福祉局 福原範彦障がい支援課長)「(Q支払い額が大きくても納付期間は変えない?)はい、それはないです。一律みなさん一緒にさせていただいています。金額の大小はそこには影響ないかなと思っています」
「利用したので支払わないといけないが…どうしたらいいのかわからない状態」

大阪市から通知されている支払い期限はまもなく。湯川さんの心情は複雑です。
(湯川さん)「私的には納得はいってないけれども、利用した側なので支払わないといけないんだけれども、すごい高額なので戸惑いもあるし、もうどうしたらいいのかわからない状態です、いま」
【追記】 大阪市は利用者と相談したうえで、分割での支払いも可能としています。ただし、分割の場合は延滞金が発生し、利率8.7%(2023年)だということです。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする