「解散戦略」大混迷、岸田首相自身が打ち消し発言 先延ばしなら維新に追い風 不気味な日本保守党「自民を割れば大政局」

岸田文雄首相の「衆院解散」戦略が混迷している。政権浮揚を狙って内閣改造・自民党役員人事に踏み切り、新たな経済対策を発表したものの、内閣支持率などに目立った効果が出ていないのだ。「秋の臨時国会(今月20日召集)での解散」が注目されているが、首相自身がそれを打ち消すような発言を行った。広島G7(先進7カ国)サミット後の6月に続き、今回も解散を先延ばしすれば、春の統一地方選で躍進した日本維新の会が選挙態勢を整えてしまう。ベストセラー作家の百田尚樹氏らが立ち上げた「日本保守党」の動きも気になる。解散風の行方に迫った。

「子育て世代の所得向上が重要であり、最低賃金を含めた賃上げなどに全力で取り組んでいく」
岸田首相は2日、看板政策「次元の異なる少子化対策」の財源を検討する「こども未来戦略会議」でこう語った。社会保障の歳出改革や、社会保険料の引き上げで捻出する方向だが、選挙を意識したのか、首相から負担増に関する言及は乏しかったという。
永田町では、衆院解散をめぐる憶測が飛び交っている。9月13日に第2次岸田再改造内閣が発足し、同25日に岸田首相が新たな経済対策を発表すると、緊張感はにわかに高まった。
内閣改造では、岸田政権から離反したとされる「岩盤保守層」を意識してか、「政界屈指の親中派」である林芳正氏を外相から退任させ、「親台派」である木原稔氏を防衛相に抜擢(ばってき)した。女性閣僚は過去最多に並ぶ5人を登用した。
ただ、報道各社の世論調査で内閣支持率に大きな反応はなかった。
新たな経済対策の発表では、岸田首相は「税収増を国民に還元する」として「減税案」を示したが、国民が期待する「所得税減税」や「消費税減税」「ガソリン税減税(トリガー条項発動)」ではなく、「賃上げ企業への減税策」「特許所得などへの減税制度」などだった。
TBS系JNNが1日公開した世論調査では、岸田首相の経済対策に、63%が「期待しない」と回答した。内閣支持率も前回比0・9ポイント増の39・6%で、不支持率は57・8%だった。
岸田政権の政権浮揚策や解散戦略をどう見るか。
鈴木哲夫氏「首相も確証を持って行動できなくなっている」
ジャーナリストの鈴木哲夫氏は「岸田首相としては『人事』と『経済対策』で弾みを付け、『旧統一教会(世界平和統一家庭連合)の解散命令』と『外交的成果』を掲げて衆院解散に打って出たかったが、いきなりつまずいた。国民は『減税案』は自分たちの負担軽減に直結せず、ピント外れの欺瞞(ぎまん=偽減税)だと気付いた。国民は、岸田首相の『聞く力』に懐疑的になっている。首相自身も確証を持って行動できなくなっているのではないか」と語る。

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