8年間事業中断のマンション、取り壊しへ 「放置できない」 東京

完成直前に建築確認を取り消され、約8年間事業が中断されていた東京都文京区のマンション「ル・サンク小石川後楽園」(107戸)について、建築主のNIPPO(中央区)が、マンションを取り壊して建て替える意向であることが判明した。22日に文京区内で開かれた住民向け説明会で明らかにした。
マンションは2012年に建築確認を受けて13年に着工。地上8階、地下2階の建物がほぼ完成していたが、建設に反対する地元住民らが着工前に都建築審査会に審査を請求。同審査会は15年、1階駐車場が災害時などに直接屋外に出られる「避難階」に該当せず、避難階段もないと判断。都条例の安全基準を満たさないとして建築確認を取り消した。
建築主のNIPPOと神鋼不動産(神戸市・22年にTC神鋼不動産に社名変更)は、都の裁決取り消しを求めて東京地裁に提訴したが、18年に「裁決の判断に誤りはない」として請求は棄却。最高裁で確定した。
NIPPOによると、その後、建物を取り壊さない方法で事業を継続できないかT社と協議を続けた。だが、同社は22年に事業から撤退。NIPPOの単独事業となり、「解体する以外に選択肢がない」として建物の維持を断念した。
NIPPOが主催した22日の説明会では、「現在の建物をこのまま放置することはできない」などと説明し、取り壊して新しい住宅事業を行う方針を明らかにした。解体時期は未定。毎日新聞の取材に対して同社は「大まかな計画ができた段階で、近隣の皆様に改めて情報提供と説明の場を設けさせていただく」と回答している。
反対運動に参加していた男性は「建築確認を取り消された違法建築物を10年近く放置してきたのは大いに問題だが、今度こそ安全対策など住民側の要望に耳を傾けた上で新たな工事計画を作ってほしい」と話している。【秋丸生帆】

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