自民党随一の脱原発論者で知られていた秋本真利衆院議員(48=比例南関東=自民離党)が、「風力発電汚職」疑惑で東京地検特捜部の家宅捜索などを受けてからすでに3週間。議員会館自室での多額の現金受け取り発覚などで、「逮捕は秒読み」(司法関係者)との見方も広がり、支持率下落に苦しむ岸田文雄首相にとって、この「秋本疑惑」も政権危機加速の材料となっている。
その一方で、岸田首相や麻生太郎副総裁ら自民最高幹部の間では「他人事の雰囲気」(自民長老)も。その理由は、秋本氏が2012年衆院選での初当選後、「父は菅義偉、兄は河野太郎と公言するなど、菅、河野両氏との親密さで知られているため」(同)とされる。
そもそも、「地検特捜部が秋本氏を捜査対象としたのは前通常国会直後」(司法関係者)とみられている。政治家絡みの捜査だけに「秘かに官邸に報告されているのは確実」(同)とされるため、「捜査進展に自民党内の権力闘争が絡んでいる」(自民長老)との憶測も広げ、「政局秋の陣の波乱要因になる可能性」(同)もささやかれる。
秋本氏は強制捜査と同時に離党し雲隠れ
特捜部は8月4日、それまでの内偵捜査を踏まえ、洋上風力発電事業を手がける日本風力開発(千代田区)側からの収賄疑惑で、秋本氏の議員会館事務所や千葉市内の自宅マンション、地元事務所を家宅捜索するなど強制捜査に着手した。
さらに特捜部は翌5日に数千万円単位の贈賄の疑いで、塚脇正幸・日本風力開発社長(64)の自宅も捜索した。秋本議員は国会で、洋上風力発電事業への参入を目指す日本風力開発が有利になるような質問をしており、特捜部は多額の資金提供が国会議員としての職務に関する賄賂に当たるとして強制捜査に踏み切った。
捜査の対象が、政府が再生可能エネルギー普及の「切り札」と位置付ける洋上風力発電を巡る政治家と事業者との疑惑とあって、岸田政権を直撃。強制捜査の直前の3日夜に海外出張から帰国した秋本氏は、捜査当日の4日に外務政務官を辞任。さらに翌5日には自民党も離党したが、その間も疑惑についての釈明はせず、雲隠れを決め込んだ。
これに対し、茂木敏充・自民幹事長は「今回の件は極めて遺憾で、秋本議員は説明責任を果たし、事案の解明に努めてほしい」と党としては突き放すコメントを繰り返した。一方、野党側は安住淳・立憲民主党国対委員長が「利益誘導の舞台は国会なので徹底的に追及したい。自民党は責任を持って調べて報告すべきで『離党したから関係ない』というほおかぶりはダメだ」と批判するなど勢いづいた。
贈賄側の社長が否認から一転、容疑認める