福島第1原発の処理水海洋放出をめぐって、中国が風評被害をあおる強い反発を示す中、パフォーマンスを得意とする政治家たちが猛アピールだ。自民党の小泉進次郎元環境相が福島・南相馬市でサーフィンして処理水放出の安全性をPRすれば、東京都知事の小池百合子氏は、相次ぐ中国からの迷惑電話に対して自動音声で〝反撃〟。政府の発信力不足もあって、2人の発信力・行動力に期待が集まっている。
ついに〝セクシー進次郎〟が株を上げた。自民党サーフィン議連幹事長の進次郎氏は3日、福島・南相馬市で行われた子供サーフィン教室に参加し、自ら海に入ってサーフィンを満喫。その後は〝セクシー〟なウエットスーツ姿で「常磐もの」のヒラメの刺し身を堪能し、「身をもって少しでも福島の海の魅力、そして、この処理水のことで一部の国内外の人たちからいわれなきこと言われてますけど、まったくそんなことないっていうのを少しでもお伝えできれば」と、処理水放出の安全性を訴えた。
これには「総理を争うライバル」と進次郎氏に厳しい姿勢を見せてきた日本維新の会の音喜多駿政調会長も脱帽だ。4日に自身のユーチューブで「小泉進次郎さんしかできないし、自分のキャラクターとか世間からどう見られているかも含めて、非常によく考え抜かれた戦略」「あっぱれ! 一本取られましたね」と、手放しで褒めたたえるしかなかった。
処理水の海洋放出をめぐっては、中国政府が科学的根拠を無視し、日本の水産物全面禁輸を決定。さらに中国から日本国内への迷惑電話や、中国在住邦人への嫌がらせが後を絶たない状況が続いている。
中国は処理水の問題を政治カードにしているため、何をしたところで風評被害を払拭するのは難しいが、それでも対中国を念頭に処理水の安全を訴えるパフォーマンスは国際世論や日本国民への大きなアピールになる。
小池都知事も中国から3万件にも及ぶ都庁にかかってくる迷惑電話に「中国は世論戦、心理戦、そして法律戦を絡め手でやってくる。正確な情報を伝えるということも必要」と辟易。対策として「処理水の放出は国際基準および国際慣行にのっとり、安全性に万全を期したうえで実施されています」「中国の原子力発電所の中には、トリチウムの年間処分量が福島第1原発の約10倍になっているものもあります」との自動音声対応を開始。これには賛否ありつつ、「よくやった」と好意的な声も数多く上がっている。
国内外での風評被害を可能な限り抑えるには、進次郎氏や小池氏のような発信力と行動力が必要となるが、当の政府は西村康稔経産相が三陸産マグロを食べて処理水の安全性をアピールも、海洋放出前だったため「茶番劇」などと失笑を買い、岸田文雄首相も海洋放出後に水揚げされたヒラメなどを食べて安全性をアピールしたが、どうにも発信力が足りていない。
もっとも今回のサーフィンは、進次郎氏が「パフォーマンスだと言われても構いません」と発言しているように、永田町で冷や飯を食わされている中で復権を目指す一環との声はある。また、小池氏も来年夏に予定されている3期目を目指す都知事選をにらんでのものという声も多い。
それでも福島の風評被害を抑えるには、2人のような強力な発信力と行動力が政治家には求められているといえそうだ。