日韓に手を結ばせてアメリカが築く中国包囲網 経済まで飲み込む「安全保障」時代の日米韓合意

日米韓3カ国の首脳によるキャンプデービッドの合意は、日米同盟、韓米同盟に加えて、歴史問題などが原因でなかなか良好な関係を作ることのできなかった日韓関係まで取り込んだ画期的な枠組みだと評価されている。
確かに外交・安全保障の世界では長年、「日米同盟や米韓同盟は機能するが、日韓関係がよくならないから、中国や北朝鮮の脅威を前に北東アジア情勢は安定しない」というのが常識だった。
日韓が相互不信から180度転換
日米韓の3カ国は、いずれも政治体制は民主主義国であり、経済も自由主義、市場主義と共通点が多い。さらにGDPも世界10位以内と、大きな存在となっている。にもかかわらず3カ国の枠組みになると、緊密な関係を構築できないでいた。
一方で、北東アジア情勢は冷戦後の30年余りで激変した。
中国の国防予算は約40倍に増え、軍事力の近代化と増強が一気に進み、今やアメリカに迫る勢いだ。さらに北朝鮮の核やミサイルの技術もアメリカが脅威を感じるほどにまで進んだ。
日米韓3カ国が手を組めば、中国・ロシア・北朝鮮に対してはかなりの圧力になるのは明らかだ。しかし、日韓両国間は歴史問題で激しく対立し、韓国軍が自衛隊の哨戒機に攻撃を意図する火器管制レーダーを照射する事件が起きるなど、相互不信は隠しようもなかった。
中国や北朝鮮にとっては望ましい状況だったが、それを180度転換させたのが今回のキャンプデービッドの合意だ。
関係者らの話をまとめると、3カ国合意の推進役はアメリカのバイデン大統領だった。
日米韓の連携実現に対するバイデン大統領のこだわりは強く、オバマ政権の副大統領だった2013年12月には日本、韓国を相次いで訪問し、安倍晋三首相、朴槿恵大統領に対して日韓関係の改善を働きかけている。この時の訪問が2015年の慰安婦合意につながったとされている。
その訪日直後に安倍首相が靖国神社に参拝すると、アメリカ政府は「日本の指導者が隣国との緊張を悪化させる行動をとったことにアメリカは失望している」という厳しいコメントを公表した。積極的に動いたのはバイデン副大統領だったという。
韓国の変化を捉えたバイデン大統領
そのこだわりは2021年に大統領になってからも変わらなかった。
当時、日韓関係は徴用工問題での韓国の大法院判決をめぐって決定的に悪化していた。バイデン大統領は就任後しばらくして、日韓両国に関係改善を積極的に働きかけてきたという。

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