――日本と、開戦前のウクライナが酷似しているとは
元陸上自衛隊「特殊作戦群」初代群長、荒谷卓氏「ウクライナでは紛争前年の2021年、極東へ向かう英海軍の空母打撃群から、ミサイル駆逐艦が離脱して黒海沿岸のオデッサに寄港しました。同10月には、米国が約180基のミサイルを供与してウクライナに配備しました。12月には米82空挺師団が派遣され、ウクライナ軍の訓練を始めました。ウクライナ軍が国境に兵力を集めた瞬間、ロシアが軍事作戦を開始した」
――では、日本は?
荒谷氏「東京にNATO(北大西洋条約機構)の連絡事務所を置く話が取り沙汰されています。21年は前述の英空母打撃群が横須賀基地(神奈川県)などに寄港し、再び25年に自衛隊と合同演習を行うため訪日します。岸田文雄首相は防衛費増額を決めて、巡航ミサイル『トマホーク』を米国から買い、全国に配置する計画。これでロシアとの国境近くで大規模演習が行われれば、ウクライナの開戦前と同じ状況になります」
参戦している認識が甘い
元海上自衛隊「特別警備隊」初代先任小隊長、伊藤祐靖氏「6月にウクライナ南部のカホフカ水力発電所で起きた巨大ダム決壊は、米国でさえロシアの犯行と結論付けていないのに、岸田首相は7億円の支援を発表した。自衛隊車両を100台送り、負傷したウクライナ兵士を自衛隊病院で手当てして、ウクライナで使う砲弾のTNT火薬の供与も検討したという。軍事常識から言えば、『日本は対ロシア戦の後方作戦に参加している』ことになります。いつロシアから反撃されてもおかしくない。その認識を持っている日本人は少ないのではないでしょうか」
荒谷氏「日本は、戦争行為がどこから始まるのかという国際常識の認識が甘すぎます。第2次安倍晋三政権下で、日本の安保法制には『存立危機事態』という概念が書き込まれた。NATOとロシアが戦争になっても、日本に直接の軍事的リスクは何もありません。それでも、もしNATOとロシアが激突して米露が戦争状態となり、米国が『存立危機事態』を根拠に自衛隊の防衛出動を要求してきたら、岸田首相は断れるでしょうか。なぜ、国民的合意もないのに、日本が戦争当事者になる必要があるのか。それによって、日本領土に核が飛んでくる可能性もある。欧米の著名シンクタンクでは、横須賀基地や佐世保基地(長崎県)から発進した米原潜がロシアへ核ミサイルを撃ち、その報復攻撃を日本が受けるというシミュレーションもされています」