夕暮れ時、千葉県成田市役所周辺の上空を灰色の鳥の大群が飛び交う。ムクドリだ。市民や近くの京成成田駅の利用者らは長年、鳴き声やフンに悩まされてきた。市は追い払うため、鳥が嫌う音を出すスピーカーを導入するなどしたが、根本的な解決には至っていない。
8月上旬の午後6時頃、ムクドリの大群が市役所東側の上空を旋回し始めた。「キュキュキュキュ!」。甲高い鳴き声が鳴り響く。ムクドリはその後、国道の歩道に沿ったケヤキやサクラの並木に集まってきた。
歩道を歩いていた成田市の女性会社員(25)は、「異様な光景ですよね。臭いし、フンが上から落ちて来るのも怖い」と語る。頭を手で覆い、小走りで通り過ぎる人もいた。鳴き声は深夜まで、街中に響いていた。
市は2010年から、ムクドリの大群を観測し始めた。夏場をピークに飛来し、市役所周辺の街路樹にねぐらを作るという。昨年には初めて、数十羽が越冬しているのを確認した。
市も手をこまねいているわけではない。市内の造園業者などに委託し、枝を 剪定 。20年度からは、鳥が嫌う音を発する「BBスイーパー」と呼ばれる音響スピーカーを導入した。職員が週2、3回、街路樹で鳴らしている。
ただ、市民からは毎年、「鳴き声がうるさい」「フンが臭い」といった苦情が相次いでいる。市の担当者は「追い払っても戻ってくる。その繰り返し。最適な方法は見つかっていない」と頭を抱える。
「我孫子市鳥の博物館」学芸員の 小田谷 嘉弥 さん(34)は、ムクドリが市街地に集団でねぐらを作る理由について、「一般的には、タカなどの外敵から身を守るための行動」と説明する。仮に追い払うことができても、ムクドリは別の場所にねぐらを作るだけだといい、「自治体同士が連携し、広域的な対策を講じる必要があるのでは」と話している。