昨年から、いわゆる「ギャラ飲み」やパパ活という名の実質的な売春行為で収入を得ていた女性が、続々と国税当局に取っ捕まり強制納税させられるという事案が続いています。
現金で貰えれば足はつかないと思っていたのでしょうか。
確かに現金で貰えば履歴は残らないのですが、何十万、何百万と貢いだ側は「カネを払うために、銀行から現金を札で下ろす」わけで、どうも定期的にカネを現金で下ろす人たちは昨今の犯罪対策などのモニタリングに引っかかり、当局から玄関をノックされ「このお金は何に使ったんですか」と訊かれることから買春が露顕することも多いようです。
また、中小企業の経営者や不動産持ちが資産管理会社からのコンサル名目で女性に給料を出して囲う昭和ながらの愛人商売も現在は過去支払い分も含めてどしどし否認されるようになり、令和の風を感じるようになりました。
結果的に、芋づるでギャラ飲みや援助交際で多額の資金を現金で引き出していた女の子たちも無事に御用となることになります。
また、最近ではYouTubeやX(旧Twitter)、Instagramなどで不透明な取得経路でバーキンのバッグなどを見せびらかしたり海外旅行でハメを外す画像動画類を拡散すると「ユーはどうやって海外へ」というお調べが発生するのも定着してきました。
そのカネis何。まあ海外では現金をあまり持ち歩かずカード決済がほとんどでしょうから日本人は足つきまくりですからね。特殊詐欺で頑張るお兄ちゃんがたもビシバシ捕まる世の中になってきました。
ところが、最近になって、新宿トー横などで若い女性が買春客待ちの立ちんぼで補導されるケースも増え、また、副産物としてそのような女性がホストクラブにハマり、法外な金額を巻き上げられるツケ払いの果てに自らを売春の世界に落としてしまう事例が明らかになってくると、これはもうホスト規制とかいうレベルじゃなく抜本的な対策が必要になってきているようにも思います。
入れ代わり立ち代わりヤバい男女がセックスの相手を求めて……
いわば、この飽食の時代の現代日本で非モテ弱者男性(おぢ)→ホスト狂いのパパ活女子→勝ち組ご指名ホスト→そういうクラブをグループで経営している面白反社会的勢力という食物連鎖が成立してしまっている現状が見えてきてしまいました。大変なことです。その結果、単発の事象にすぎないはずの脱税で冴えない中年男性と売春女のセットで捕まってる案件の少なくない割合がこういう社会病理全体のピースのひとつに過ぎないことが分かってしまうのです。
先日、契約結婚サイトの記事を文春に書いたところ、入れ代わり立ち代わりヤバい男女が同居相手やセックス相手を求めて鈴なりになっている地獄のふちを垣間見たわけですが、そういう「性欲を抱いた個人が、乾いた私生活をどう生き抜くか」という永遠のテーマを感じることになります。欧米西側諸国のキリスト教圏が罪滅ぼし的にLGBT系のムーブメントで自縄自縛になる中、我が国では正しい性教育や然るべき出会いの場もうまくセットできないまま、社会に放り出された個人がどうにもならずに欲望を満たしたり伴侶を求めたりする構造になっています。
〈 「新垣結衣はいなかった」契約結婚サイトに見る修羅と煉獄の一部始終
希望に満ちた呪詛、この時代の“家族の入口” 〉
先日摘発された、名古屋の「頂き女子」詐欺事案は、俗にいう違法な情報商材紛いや売春斡旋の組織的事件とは異なり、ある種の魂の叫びすらも感じさせる「カネの欲しい女」と「『おぢ』と呼ばれるどうしようもない非モテ中年男」との需要と供給のバランスの上に成り立ち、さらにカネを貢ぐおぢの特質をこれでもかとエグっています。
カネを貢ぐ傾向にある「おぢ」にあたる非モテ中年男性とは、頂き女子のマニュアルをそのまま引用するとこんな人たちです。
〈 1. 人生に夢や目標、生き甲斐がない
2. 仕事場と自宅を往復するだけの生活で、友人も恋人もおらず、趣味もないのでお金を使わない
3. ファッションに無頓着で女性経験が少ないか、まったくない(童貞)
4. 結婚願望があり、将来に不安を感じている
5. 母親から大事にされたいとか、悩みを聞いてほしいなどの癒やしを求めている〉
でもこれ、ことさらに書くと「こんな非モテ、生きてるだけでも辛いだろ」 と思う一方、人間誰しも異性関係が持てなくて悶々としていたり、将来に不安を感じて無条件の愛情を欲したりする、人としての弱さを抱くときってあるじゃないですか。
また、若くして親に先立たれて天涯孤独になってしまっていたり、境界知能やら性格的な問題や、病気を患ったりして、孤独を抱えつつも人とのかかわりをなるだけもちたくないと思う男性も、そう少数じゃないと思うんですよ。男ならずも人間誰しも、けがや病気、失業一発で誰でもこういう失意のどん底は経験しうるものです。
かくいう私だって、36歳まで童貞でした
かくいう私だって、たまたま幸運に恵まれて愛する人に巡り合えて子育てに奔走しているけど、ちょっとひとつ巡り合わせが間違えば50代童貞非モテでどうしようもない人生を送っている可能性だってあります。他人の非モテを笑えないし、なんとなれば結婚した後の36歳まで童貞だった私からすれば、ここで例示される「おぢ」は一歩先の崖の下です。
そして、その崖の下の人たちからすれば、こういう女性からカネを巻き上げられるカモとして狙われる対象となっていますから、ほんとこの世に神はいないのかと絶叫したくなるぐらいに辛い社会だってことでしょう。好意を持って接してくれる女性に対してガードを下げてみたら詐欺でした、って人間不信ってレベルじゃない。そういう詐欺を効率的に安全に進めるマニュアルまでできていて、その内容を見ると恐怖すらも感じます。
そのような「頂き女子」マニュアルでは、カモとなるおぢの特徴からおぢとの接触、カネの引っ張り方から揉めたときのアフターフォローまで、オレオレ詐欺同様如何に同情を引き出してカネをむしり取るかというノウハウに特化しています。「こんなんで立件していいのか」と思う一方、事件に立ち会った捜査員が涙ながらに「これはひどい。絶対摘発する」という気持ちを新たにしたりしたんでしょうか……知らんけど。
いままで騙されてきたおぢ達も、その女性経験や社会観の乏しさから騙されたことすら気づかないでいる人が多数なんじゃないかとすらおもうんですよ。
「子どもに教えるのはけしからん」と言いつつ……
今回、この「頂き女子」の詐欺はマニュアルを作成して販売した女性がまず摘発されましたが、それは詐欺幇助であって、そのマニュアルを買い、SNSなどでおぢからいくら巻き上げたか克明に報告したり、自慢して競い合ったりする書き込みなどから、被害全体の構造をどう明らかにするかが捜査の焦点となってきています。「おぢ」と親しくなって嘘の事情を言いカネを巻き上げるマニュアルなのですから、詐欺事件として立証が困難な故意があったかどうかがクリアできる時点で詐欺又は詐欺幇助として挙がるのも当然と言えます。
単に警察庁による詐欺事案としての捜査だけでなく、冒頭に書いた通り売春であってもカネは所得ですから脱税で引っかかる女性も多数出ると見られますし、何より、これらの女性を鵜飼いの鵜として売春させてでも高利のツケ払いを求めたホストクラブの従業員や店長などの経営者も訴追の対象となる可能性があります。
恋愛には健全とされるものなどが教科書のようには存在せず、数学のように正しい解答などない世界です。カネ儲けの具として性が利用され、物事をちゃんと理解できない女の子が売春したり詐欺で得るカネを、結果的にホストクラブがかき集めるのは反社会的であると言えます。さっさと構造を明らかにして摘発しちゃいなよと思う一方、これはもはや社会問題であって、性の多様性とか語る以前にホストクラブのような風俗営業の在り方そのものを適切な方法で規制するべきなのではないかとも思います。
また、これらの社会状況は概ね男性と女性の性的関係と、それが社会的にどうあるものなのか、そして結婚し子どもを産み育むということはどういうものなのかを教える必要があるのでしょう。性教育というと「セックスはどうやるのかを子どもに教えるのはけしからん」と言いつつ、正しく教えなかったら、誰から、どうやって学ぶのでしょう。
中出しの結果、経済的に成り立たない若い女性が妊娠してしまうリスクや、ダメ男に捕まってしまうとシングルマザーになって厳しい貧困の中で暮らす恐れがあること、また女性には妊娠適齢期というものがあって生物として少なくとも35歳ぐらいまでには安全に出産することが宿命づけられていることなど、そういう幸せに生きていくために不幸にならないようにする知恵を授ける必要があると思うのです。
非モテ男性においても、性格や知能の面で生きづらさを感じ、親兄弟以外にまともに友人関係を構築できない人たちがダイレクトに社会の負け組になってしまうと、一生結婚もできず子どももなく、ただ生まれて働いて死ぬだけの人生の中でようやく振り向いてくれる女性が来たと思ったら頂き女子でしたなんてシャレにならんことが起きます。
食い物にされる非モテ中年男性の存在の哀しさ、そして救われなさ……
かつては地元の世話役や仲人が、昭和ぐらいだとお見合いや学校・職場での結婚が主流だったのに比べて、いまや相席やアプリでの出会いもどんどん増えているものの生涯結婚率は減り、子どもの数も取り返しがつかないぐらい減っていくと社会が持続できない恐れはあります。交際や結婚生活など、男女関係をヲチしている給湯室のお局グループや町内会で世話を焼く方々が失われたいま、孤立した個人の悩みはどこに吐き出されるのでしょうか。助けて俺たちの岸田文雄。そういうことも全体で考えて、これらの性の社会問題を捉え直さないといけないフェイズにどうやら日本は入ってしまったようです。
ネタにした契約結婚サイト、運営している技術者・村上福之さんのところにも、このサイト経由で結婚して幸せに暮らして子どももできた旨の報告がいくつか舞い込んできています。私も取材でなんだかんだご一緒した人たちの一部はいまだにFacebookで繋がっておりまして、丁寧な結婚報告を戴いたりもしています。人間、自分を見つめ直し、きちんと他人に受け入れられるように自分を磨きながら、求めて行動を続けていれば、振り向いてくれる人とどこかで巡り合えることもあるのかもしれません。
それどころか、その村上福之がいつの間にかちゃんと再婚して子どもができて育児頑張ってるのを見て、ああこれは私も前を向いて努力しなければなあと思わずにはいられないのです。正しい努力をしろというのは抽象的には理解できても、その正しさってのはどうやって自己認識できるんですかね。
生きていくためにはおカネが必要だし、どうしようもなく好きなホストに貢ぐためにおぢからカネを巻き上げる行為に走ってしまう女の子の気持ちも分かります。ただ、そこで食い物にされる非モテ中年男性の存在の哀しさ、救われなさを思うにつけ、人の世はかくも厳しくも辛いものなのだという感覚を新たにした一件でした。
(山本 一郎)