8日午前、北海道上富良野町で、自転車ロードレース「ツール・ド・北海道」に出場中の男子大学生が死亡した事故…当時、死亡した選手の前方を走行していたという選手が、当時の状況などを証言しました。
8日午前11時40分ごろ、上富良野町の道道で、自転車ロードレース「ツール・ド・北海道」に出場していた東京都の中央大学の4年生、五十嵐洸太(いからし・こうた)さん21歳が反対車線の乗用車と正面衝突し、死亡しました。
警察によりますと、現場は、カーブが連続する片側1車線の山間路で、五十嵐さんは当時、前の集団を追い越すため、反対車線に出たとみられています。
大会の運営団体は、現場のコースについて「自転車のはみ出しを禁止していた上、反対車線の車両の通行を規制していた」と説明しています。
大会のHPに記載の事故現場を含むコースの通行規制の時間は、午前10時40分~午前11時45分まで。
これに対し警察は、どこから、どこまで、何時から、何時まで実際に通行規制が及んでいたのかを捜査中としていますが、自転車の走行車線は、富良野警察署が公式に規制、乗用車が走行の反対車線は、大会側で自主的に警備、規制していたとしています。
乗用車を運転していたのは、63歳の男性でしたが、その後の警察の調べで、乗用車は吹上温泉に向かうため、通行規制の始まる前、すでにコースに入っていたとみられています。
この事故を受け、8日に開幕した「ツール・ド・北海道」は、10日までの全日程が中止となりました。
事故による全日程の中止は、37回目となる大会史上、初めてですが、事故当時、前方を走行し、死亡した五十嵐さんとも面識があったという選手が当時の状況などについて、下記のように証言しました。
Q.選手にとっては、どのような認識、位置付けの大会ですか? 「下り基調で、勾配もきつく、難易度は高い」 「国内のプロとトップの大学生たち、世界のプロが参加するレース」
Q.選手から見た当時の交通規制の状況は? 「片側車線だけの規制で、片側だけのレースだとは知っていたが、選手に直接、そういったお願いはされていない」 「監督会議で、監督には言っていたのかもしれないが、直接、選手に言っているという場面はない」 「自分のチームメイトも、そういった認識だった」
Q.去年も同じ状況? 「去年は、交通規制がきつかったと観戦していた人から聞いた」 「選手としても、看板とかで今までお知らせが立っていたが、今回は、あんまり見受けられなかった」 「規制されていることを知らない人も、結構いたのでは」 「交通規制が緩くなっていたのは、明らかにあると思う」
Q.他の大会と比べてみると? 「下りで特にスピードが出るので、両側規制になることが多い」 「そこに車を入れるのは、普通考えられない」 「十勝岳の上り下りは、両側車両規制だったが、事故の車以外にも、たくさん車はいたし、中にはトラックもいた」 「そのような車の規制の甘さが、今回の原因では」
Q.実際に走行していて、危ないと思う場面はあった? 「事故のあったところは、右コーナーで、コーナーの先が見えない急なところ」 「反対車線に車がいると、到底どうもできないところ」 「プロの操作性を持っても、何かの要因で右側に入り込むことは十分考えられるので、そのための両側通行規制のはずだった」 「運営の交通整備の甘さが直接的な原因では」
Q.事故が起きた時、グループのどこを走っていた? 「前の方にいた」 「警察は、五十嵐選手が集団を追い越したと話していたが、自分が実際、走った立場からすると、そんなことはなくて、集団はいなかった」 「ちょっと離れて前にいたのでわからないが、集団を追い越すために切り込んだわけではないのではないか」
Q.五十嵐選手と面識は? 「国内のプロツアーで一緒に走っていたので、面識はあった」 「若い選手なので、本当に悲しいです…」
Q.大会運営について思うところは? 「高齢の方々が現状維持でやっていて、運営もあんまり変わらず、弱体化している」 「そんな中の甘さが露呈した仕事、批判されてしかり!」
出場していた選手から新たな状況の証言、厳しい指摘も出た今回の事故…警察は、業務上過失致死などの疑いも視野に捜査する方針です。