創業者ジャニー喜多川氏(2019年死去)の性加害問題をめぐり、ジャニーズ事務所が2日に開いた会見で、特定の記者を指名しないようにする「NGリスト」の存在が発覚し、テレビ、新聞などのメディアが大騒ぎで報じている。
事務所側は時事通信の取材に対し、9月30日の会議で、会見運営を担った外資系PR会社に「NG」と書かれた媒体リストを示されたことを認めたものの、「弊社は誰か特定の人を当てないでほしいなどという失礼なお願いはしておりません」と関与を否定。PR会社に謝罪するよう求めたという。
この日の会見では、ふだんは会見場に入ることが認められず、質疑応答の場でも一切の忖度なしで鋭く切り込む実話誌系の記者も指名されていた。真っ先に避けたいであろう「うるさ型」タイプの記者も当てられていたことから、事務所側の説明通り、会見では「NGリスト」は使わなかったのか、それとも、単に司会者が記者の顔を知らなかっただけなのかは分からない。
PR会社は5日、「資料は限られた会場使用時間の中で会見の円滑な運営準備のために弊社が作成し、運営スタッフ間で共有したもので、ジャニーズ事務所様は作成や運営スタッフへの共有を含め一切関与しておりません」とのコメントを公表したが、いずれにしても、500人近くにのぼる性被害者を出した加害者側企業の釈明会見で“やらせ”疑惑が浮上したことには変わらない。
■挙手しない記者が指され、首相がすぐに「答え」を用意する茶番
テレビや新聞は早速、この“やらせ会見”を批判しているのだが、ジャニーズ事務所の会見以上に酷いのが首相会見だ。
新型コロナ禍で会見場の記者席は100席近く減らされ、今も日本雑誌協会(雑協)の加盟社やフリーランスなどの割り当ては10席ほどしかない。会見時間は区切られ、「限られた時間内に多くの記者に質問してもらうため」といった理由で、再質問(更問い)も認められない。そして官邸に常駐する記者を優先的に指名し、雑協の記者やフリーランスはほとんどと言っていいほど当てられないのだ。
驚くのは、「質問がある人は挙手を」と呼びかけながら、なぜか挙手していない記者が指名され、その記者が質問しないうちから首相が手元の資料の「答え」を探し始め、用意していることだ。これぞ茶番劇と言っていい。
テレビや新聞はジャニーズ会見の「NGリスト」を問題視するのであれば、首相会見の“やらせ”も追及してほしい。