交流サイト(SNS)で若者に人気のインフルエンサーと提携して地域の魅力発信などを目指す神奈川県小田原市の若者活躍事業に疑問の声が上がっている。市は「小田原コレクション」と銘打った大型イベント開催を目標に3年間で計約3億円の事業費を見込み、そのうち3800万円を2023年度一般会計9月補正予算案に計上した。しかし、少数会派は事業効果の検証が不十分だとして「生活に苦しむ若者の経済支援こそ優先すべきだ」と予算の修正案を提出する方針だ。
10~30代を対象とした「若者が創る、集う、にぎわいまちづくり推進事業」は、若年層の市外転出が相次ぐことから「若者に郷土愛を育んでもらう」(市担当者)のが狙い。3年間の事業の1年目はSNSのフォロワー数が多く発信力の高いインフルエンサーと市が提携し、小田原の魅力を伝える動画制作や投稿をしてもらう。また、市内のコワーキングスペースを活用し若者の起業を後押しする。
11日の市議会建設経済常任委員会で市はインフルエンサーの具体的人選について明言しなかったが、市議からは「流行の波があるインフルエンサーの発信力を過大評価している」との声が上がった。市は若者へのヒアリングやニーズ調査を行っておらず、34歳で市議会最年少の稲永朝美市議(ミモザりっけん)が「若者のための事業のはずが若者の声が反映されていない」と事業費3800万円を削除した修正案を提出した。
修正案は常任委で賛成2、反対6で否決されたが、15日の本会議で再び修正案を提出するという。守屋輝彦市長が2020年に市長に就任して以来、市では「若者活躍」を掲げた事業が増えており、稲永氏は「これまでの事業の検証もされていない。新型コロナウイルスの影響で苦しむ子育て世代への支援こそ今は必要」と訴えた。