「チッソ」が控訴 原告団は満身の怒り込め抗議「非人道的な控訴」水俣病救済漏れ裁判

水俣病の症状に苦しむのに、特措法の救済から漏れた人たちが、国や熊本県、加害企業の「チッソ」に賠償を求めていた裁判。9月27日に大阪地裁は、原告全員を水俣病に罹患していると認定し、被告3者に賠償を命じる判決を言い渡しましたが、10月4日付けで「チッソ」が控訴しました。チッソは、「この件については、提訴したかどうかも含めて、お答えは差し控える」とコメントしました。いっぽう原告団は抗議声明を発表しました。(声明の一部)「この判決は、水俣被害者救済特措法の居住地域、生まれた年代での線引きや、申請締め切りが被害者を切り捨てる誤りであったことを示し、これまでの水俣病行政の根本的転換を求めたものであった。」「高齢化する原告らの生きているうちの救済のためには一刻の猶予もないことを無視した非人道的な控訴であることも明白である。」などとして、被告チッソの控訴手続に「満身の怒りを込めて抗議する」とし、改めて早期解決への協議開始を求めました。水俣病をめぐっては、2009年に成立した「水俣病被害者救済特別措置法」(特措法)で、未救済の被害者に一時金や療養費を給付するという救済措置がとられたものの、期限に申請できなかった人や、申請したものの救済を認められなかった人が続出しました。関西などに住み、特措法の救済から漏れた128人は、国と熊本県、原因企業の「チッソ」(旧:新日本窒素肥料)などに賠償を求め、2014年以降順次、大阪地裁に提訴していました。大阪地裁は9月27日の判決でまず、原告らの症状の原因は、八千海一円に住んでいた時期に魚介類を継続的に食べ、メチル水銀を摂取したこと以外では説明できないとして、「原告全員が水俣病に罹患している」と認定。また、国側が原告らの賠償請求権は消滅している(=除斥期間を過ぎている)と主張した点については、メチル水銀摂取から長期間が経過した後に典型的な症状が現れるケースが少なくない点などを踏まえれば、「除斥期間の起算点は、原告らが神経学的検査で水俣病と診断された時点であり、賠償請求権が消滅した原告はいない」と判断。原告128人全員に、1人あたり275万円を賠償するよう命じました。(122人は国・熊本県・チッソが連帯して賠償責任/6人はチッソのみが賠償責任)。これを原告らは「画期的判決」だと評価し、国や県、チッソに対し、控訴しないよう強く求めていましたが、10月4日付けでチッソが控訴しました。

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