今年7月下旬から8月上旬の記録的な高温について、東京大や気象庁気象研究所などの研究チームは19日、60年に1度しか起こらない非常にまれな暑さで「地球温暖化による気温の底上げがなければ起こり得なかった」との速報的な分析結果を発表した。
チームは、温暖化が個々の異常気象にどれほど影響したのかを定量的に評価する「イベント・アトリビューション(EA)」という手法で、今夏の暑さと6月から7月上旬の大雨について分析。人間活動が原因の温暖化が進む実際の地球の気候と、温暖化していない仮想の地球の気候をスーパーコンピューターで再現し、比較した。
チームが7月下旬から8月上旬の高温について分析したところ、温暖化が進む現在の地球でも発生確率が1・65%で、60年に1度しか起こらないとの結果だった。一方、温暖化していない仮想の地球の場合はほぼ0%だった。
また、6月1日から7月10日の各地の大雨についてEAで分析した結果、日本全国の線状降水帯の発生数が温暖化によって約1・5倍になり、特に九州地方で顕著に増加したと見積もられた。
気象庁によると、今夏(6~8月)の全国の平均気温は平年より1・76度も高く、1898年の統計開始以来最高だった。こうした暑さは、太平洋赤道域の中部から東部にかけて海面水温が平年より低い状態が続く「ラニーニャ現象」の影響が残っていたことなど、熱帯域での複数の異常が要因になったと考えられている。
東京大大気海洋研究所の今田由紀子准教授(気候力学)は「今夏の暑さはさまざまな要因が複雑に絡み合った結果だが、それでも温暖化していなかったら、7月下旬以降のような暑さの発生確率は限りなくゼロに近かった。近年の猛暑に関しては、温暖化が影響しているのはほぼ間違いないと言っていい」と話す。【山口智】