広島市の平和記念公園(中区)と米ハワイ州のパールハーバー国立記念公園の姉妹公園協定締結を巡り、広島市市民局の村上慎一郎局長が21日の市議会本会議で「原爆投下にかかわる米国の責任の議論は現時点では棚上げにし、核兵器の使用を二度と繰り返してはならないという市民社会の機運の醸成を図っていく」と答弁したことに、波紋が広がっている。
共産党の中村孝江市議(安佐南区)の「協定は原爆を投下したアメリカの責任を不問、免罪にするものか」との一般質問に答えた。
松井一実市長は7月の定例記者会見で、「『和解の精神』を重視した対応をするべき時期に来たと判断した」と説明している。村上局長は「和解の精神」について「現時点で責任に関わる議論は双方で棚上げし、二度と戦争の惨禍を繰り返すべきではないという考え方を確認し、未来志向で対処していこうというもの」と述べた。
しかし、翌22日の本会議で無党派クラブの門田佳子市議(中区)から「『棚上げ』とはどういう意味か」と問われると、村上局長は「協定がアメリカの責任を不問・免罪にするためのものではないということを理解してもらうために用いた」と釈明。「棚上げ」の解釈について「問題の解決そのものを放棄するのではなく、事情に応じて、一時的に保留するものだと思う」とも述べた。
6月の協定締結を巡っては、被爆者や市民団体から「早急だ」「市民の声を聞くべき」など疑問や批判の声が上がっていた。村上局長は22日の答弁で、「国際情勢を考慮するなら解決を待つのではなく、未来志向に立った対応を逃がさないようにすることが急がれると考えた」と説明した。
「棚上げ」発言について、県被団協の佐久間邦彦理事長(78)は「よく言えたもんだ。言ったこと自体がおかしく、納得いかない」と憤った。そのうえで「実際に和解できるのか。これは広島だけではなく日本全体の問題だ」と述べた。【岩本一希】