東京都墨田区の賛育会病院で、医療機関として全国2例目の赤ちゃんポスト設置を計画していることが明らかになった。奈良大の床谷文雄教授(家族法)は「東京にあり、体力もある医療機関が取り組むことには大きな期待がかかる。赤ちゃんポストには『育児放棄を助長する』などの批判が常につきまとうが、そうした厳しい国内環境の中でも前向きに取り組めるかが課題だ」と話す。
国内では2007年、熊本市の慈恵病院が初めて赤ちゃんポストを設置した。その後、複数の団体が設置を表明したり、検討したりしたが、15年以上にわたって医療機関による新設は実現していない。
床谷教授は、慈恵病院では年間数千件とされる妊娠相談に対応し、赤ちゃんを受け入れるための24時間体制を整備するなど、医療機関の負担の重さを指摘。「現状では行政からの支援は難しく、財政的には医療機関の負担となる。開設に伴うリスクを負える機関がこれまでなかったというのが現実だ」と話した。
賛育会病院を運営する社会福祉法人賛育会は、24年度の設置に向けて調整を急ぐ考えを示している。開設に向けた課題について、床谷教授は「医療機関は子どもを安全に受け入れる体制を整えるとともに、受け入れ後には児童相談所などと連携して対応することが重要となる。熊本市が大学教授や弁護士による『こうのとりのゆりかご』専門部会をつくったように、受け入れ態勢を検証する場の設置も必要だ」と述べた。【秋丸生帆】