京アニ公判 被告作品は「1次審査段階」で落選…会社に危害加える連絡も 京アニ社長の尋問続く

36人が死亡し32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第11回公判は2日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で、京アニの八田(はった)英明社長の証人尋問が続けられた。京アニの小説コンクールを巡り、被告が応募した作品は、400字程度のあらすじで判断される1次審査で、短編、長編のいずれも落選していたと明かした。
事件当日、京都市伏見区の第1スタジオでは、テレビ局による取材が予定されていた。八田氏は取材のためにスタジオに向かっていたところ、「会社が火事だ」と一報を受け現場へ急行。黒い煙に包まれたスタジオを「見ているしかなかった」と声を震わせながら振り返った。約170人いた社員のうち約4割が事件で何らかの被害を受けた。「涙をこらえて(作品を)作り続けた」と話した。
被告が平成28年に短編と長編の2作品を応募するも落選したコンクール「京アニ大賞」についても証言。短編と長編あわせて約600作品もの応募があり、1次、2次、最終の順で3回に分けて審査を進めていたと明らかにした。被告の作品はいずれも、あらすじを読んで判断する1次審査段階で落選したとの認識を示した。
このほか事件直前、会社に危害を加える旨の連絡が何者かからあったと明らかにした。警察への相談のほか、防犯カメラの設置やさすまたを購入するなどして対策を施したという。
9月5日の初公判で弁護側は、第1スタジオ内部の構造が影響し、被害が拡大した可能性について言及した。第1スタジオは間仕切りがない作りになっていたが、八田氏は「人の顔が見えるスタジオにしたかった」と強調。防火対策について問われた際には「法律に基づいてやっていた」と話した。

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