「北九州の街を覆っていた恐怖」工藤会トップが問われている4つの市民襲撃事件とは

特定危険指定暴力団・工藤会のトップで総裁の野村悟被告(76)と、ナンバー2田上不美夫被告(67)の控訴審が、13日福岡高裁で始まります。1審の福岡地裁は、野村悟被告に死刑判決を、田上不美夫被告に無期懲役の判決を言い渡しました。控訴審では、野村被告への極刑が維持されるのかが争点になりそうです。2人が問われているのはどんな罪なのか。2021年12月に放送した内容を、改めて掲載します。
◆工藤会の「恐怖」に覆われていた北九州市
年の瀬でにぎわう小倉の繁華街。平穏なこの街は、かつて工藤会の「恐怖」に覆われていました。2003年、北九州の街が騒然としました。小倉北区のクラブに投げ込まれたのは手りゅう弾。従業員11人が重軽傷を負いました。実行犯は工藤会の組員。このクラブは、暴力団追放運動の先頭に立つ店として知られていました。
不当な要求行為に応じない市民や企業に対して、危険な暴力行為を繰り返し行うおそれがあるとして、全国で唯一、特定危険指定暴力団に指定された工藤会。市民を標的にする犯罪を次々と起こしていきました。
◆野村悟被告は4事件で起訴された
■元漁協組合長射殺事件(1998年2月18日)
(1)1998年、小倉北区で起きた元漁協組合長射殺事件。
■元福岡県警・警部銃撃事件(2012年4月19日)
(2)2012年、小倉南区で起きた福岡県警の元警部銃撃事件。
■看護師刺傷事件(2013年1月28日)
(3)2013年、福岡市博多区で起きた女性看護師刺傷事件。
■歯科医師刺傷事件(2014年5月26日)
(4)2014年、小倉北区で起きた歯科医師刺傷事件。
これらの4つの市民襲撃事件の捜査で、警察がターゲットにしたのは、「工藤会」の頂点に君臨する2人でした。
殺人や組織犯罪処罰法違反などの疑いで逮捕・起訴されたトップの野村悟被告とナンバー2の田上不美夫被告。2人に襲撃を指示したことを示す直接的な証拠はありません。警察がその2人を立件する根拠としたのは、暴力団特有の「上意下達」の指揮命令系統だったのです。
◆2021年8月 1審判決
おととし10月の初公判から1年10か月。野村被告と田上被告への判決は8月24日に厳戒態勢の福岡地裁で言い渡されました。
福岡地裁は、元漁協組合長の射殺事件について野村被告を首謀者と認定。ほかの3つの事件については、「野村被告の指示命令があった」とも指摘し、野村被告に死刑、田上被告に無期懲役を言い渡しました。
その後、野村被告は裁判長に対してこんな言葉を投げかけます。
野村悟被告
「こんな裁判があるか!」
「生涯後悔するぞ」
両被告はその後控訴しています。
◆北九州の街に影響は
トップが不在となった「工藤会」。その影響力は北九州市の街にまだ残っているのでしょうか?
タクシー運転手
「今は組の人も見ないもんね。昔は幹部連中がいたら、ずらーっと並んだりしていたけど」
スナックのママ
「今の若い人たちは、反社会勢力の人たちを知らない人ばっかりじゃない? そういう大きな事件があったところで」
「(死刑判決を受けて)それほどの反応はない。今、昔の人たちがいなくなってきてるから」
2007年から北九州市長を務める北橋健治(きたはし・けんじ)市長は、工藤会との戦いについてこう振り返ります。
北九州市・北橋健治市長(2021年当時)
「市民あるいは企業関係に対する襲撃も相次ぎまして、大変に厳しいつらい道のりをその間、体験しております。街は変わった、安全な都市に大きく発展をしてきました。未来成長型の投資というものが着実に進んでいます」
「環境未来都市」として、持続可能な経済社会の発展を目指すためにも、組員の離脱就労支援など暴力追放運動への手を緩めるつもりはないと話しました。

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