“留守番は虐待”条例案取り下げ 待機児童「全国ワースト2位」の埼玉 子育て支援「もっとやることが…」専門家

小学校3年生以下の子どもを住居に残したまま親などが外出することを禁じる、という自民党埼玉県議団が県議会に提出した“虐待禁止条例案”。しかし、反対の声が高まり、自民党埼玉県議団は一転、10日に条例案を取り下げました。専門家は子育て支援について、「条例を作る前に取り組むべきことがある」と話しています。
有働由美子キャスター
「小学3年生以下の子どもを『公園で子どもだけで遊ばせる』『子どもだけで登下校させる』『子どもに留守番させて買い物に行く』こうした行為は虐待だとして、見つけたら通報することを義務づける…こんな条例が、もし皆さんの自治体にできたらどう思いますか?」
「実際に、埼玉県の自民党の県議団がこうした内容を含む虐待禁止条例の改正案を議会に提出し、13日に採決が迫っていました。その直前になって10日、条例案を取り下げると発表したんです。何が起きたのでしょうか」
小野高弘・日本テレビ解説委員
「県民などから猛反発があったんです。10日、さいたま市で話を聞きました」
幼稚園児の父親
「夫婦共働きなので常に家にいるわけにもいかない」
小6・小4・年長の母親
「(子どもだけで)ちょっとおやつ買いに行きたいとか、そういうことができなくなるって(子どもに)言ったら『えー』って」
6歳・2歳の母親
「仕事に復帰したいなって気持ちもあるので、ちょっと厳しいな」
小野委員
「この条例案には罰則がないとはいえ、反対の署名が10万以上集まりました。埼玉県に寄せられた意見も、反対1005件に対し賛成はたったの2件と県民から総スカンを食らった形です」
有働キャスター
「皆さんの声もよく分かるなと思うんですが、誰が考えたらこんなことになるんだろうって、私も耳を疑いましたよ」
小野委員
「提案した自民党の県議団は『子どもを放置している状況を再認識いただきたかった』と述べています。ただ、『言葉足らずで不安と心配の声が広がった』とも釈明しています」
「ただ、さいたま市のPTA協議会は厳しい指摘をしています。『子どもの自主性を重んじることとネグレクトや虐待を同列に扱うべきではない』『共働きや、ひとり親家庭など子どもの養育に懸命に励む保護者に対する配慮がない』」
「こういった意見が出るのも当然なのです。埼玉県は学童保育の待機児童が全国で東京に次いでワースト2位なんです」
●学童保育待機児童(厚労省調べ、去年5月時点)
1位:東京都3465人、2位:埼玉県1554人、3位:千葉県1179人
有働キャスター
「子どもを置いて出ざるをえない保護者に責任を押しつけるということになるわけで、『おかしいよ』という声が議員たちの中から上がらなかったのか…。それで“子育て支援”ってギャグみたいに聞こえます」
小野委員
「子育て支援については、“もっとやることがあるのでは”と専門家も話しています。子ども論が専門の獨協大学の和田一郎教授は『学童など子どもを預ける場所の整備をしているか。家庭の中だけでなく社会で子どもをみる環境作りができるのか。条例を作る前に取り組むべきことがある』と指摘しています」
有働キャスター
「落合さんはどう考えますか?」
落合陽一・筑波大学准教授(「news zero」パートナー)
「選挙で選ばれた議員がどんなヤバイ条例案を提案してくるかどうかは、実際のところ予想ができないので、今回は署名で止められたのならそれは民主主義が有効に機能したということなのかな…と勝手に考えています」
有働キャスター
「たしかに声を上げることで、今回は取り下げることになったわけですからね。地域の条例などに関心を持つ、おかしいと思ったら声を上げていく、“私たちの声には力があるんだ”という良い事例にしたいです」
(10月10日放送『news zero』より)

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