22日投開票される2つの補選は、岸田政権の命運を占う重要な選挙だが、自民党の苦戦が伝えられている。とりわけ劣勢なのが、参院徳島・高知選挙区だ。
各社の情勢調査では、無所属の元職で立憲民主党などが支援する野党系の広田一氏(55)が、自民党新人(公明党推薦)で前高知県議の西内健氏(56)をリード。先週末の14日には、岸田首相と公明党の山口代表が応援に入り、そろって街頭演説を行う異例の体制で西内への支持を呼びかけたが、一向に差は縮まらない。
そもそも岸田首相が不人気だから、応援に駆けつけても票につながらないのだ。14日も岸田首相が演説を始めると聴衆から「増税メガネ!」のヤジが飛び、叫んだ男性を警官が取り囲んで会場から締め出すという不穏なムードに包まれていた。
いよいよ選挙戦も最終盤。両陣営ともラストスパートをかける中で、岸田首相がおととい夜にX(旧ツイッター)に投稿した応援メッセージが党内で物議を醸している。
《参議院徳島県・高知県補欠選挙、自民党公認の【西内けん】さん。実直で真面目でお酒が好きな西内けんさんのことを多くの人に知ってもらいたい。そんな思いでご家族一丸となって戦っています》
■地元は困惑、党内からは恨み節も
参院徳島・高知は、自民党の高野光二郎前参院議員が酒を飲んで秘書に暴行し、ケガを負わせて辞職に追い込まれたことで補選になった。
「それなのに、わざわざ『お酒が好きな』なんて書く必要があるのでしょうか。前職が居酒屋で起こした秘書殴打事件を思い出させるだけです。事件の悪いイメージを払拭するためにも、西内候補は真面目さを売りにしているのに……。総理の投稿は意味不明で、応援のつもりだとしたら完全に逆効果です。あまりにセンスがない。ただでさえ劣勢なのに、酒好きアピールがトドメを刺しかねないと困惑が広がっています」(自民党高知県連関係者)
前職の高野氏が所属していた自民党麻生派は、無所属議員の「有志の会」メンバーだった仁木博文衆院議員(徳島1区)を一本釣りしてまで必勝態勢を整えたはずが、それもかえって逆風になっているという。民主党政権で官房長官を務めた故・仙谷由人氏の後継という立ち位置だった仁木氏が自民党入りしたことで、古くからの支援者が離れ、むしろ野党系の結束を高めることになった。
一方、同日投開票の衆院長崎4区補選は、岸田派の世襲3代目が候補者ということもあり、岸田派が総がかりだ。
岸田首相は総裁派閥のメンツがかかった衆院補選だけでも勝てればいいと考えているのかもしれないが、麻生派からは「参院補選は見捨てられたみたいだ」と恨み節も聞こえてくる。