京都アニメーション第1スタジオが放火され36人が死亡、32人が重軽傷を負った事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判第13回公判が23日、京都地裁であった。刑事責任能力を調べるため起訴前に精神鑑定を行った専門医が出廷して「妄想性パーソナリティー障害」との診断結果を明らかにし、「被害妄想に影響したが、それ以外はほとんど影響が認められない」と証言した。
小説のアイデアが京アニ作品に盗用されるなどしたとの「妄想」が事件にどの程度影響したかが争点。鑑定は検察側と弁護側が起訴前と起訴後にそれぞれ行っており、鑑定結果の審理が始まった。
証言したのは、大阪赤十字病院精神神経科の和田央医師。捜査資料や被告、母親らとの面談などを踏まえ、「極端な他責思考」「誇大な自尊心」「不本意な人間関係に不満を抱き、攻撃的になる」との三つの性格傾向を指摘した。両親の離婚や父親からの虐待、体調不良でも休まず高校を皆勤で卒業した成功体験などが影響したと分析した。
和田医師は「被害感を抱くのに十分な状況があると他人のせいだと思い込むようになった」とし、「独善的になりやすく共感性が欠如し、不満が内部で修正しないまま膨らみ、攻撃的な態度に転換した」と説明した。
被告が小説を落選させたとする「闇の人物」について、鑑定中の言及はなかったが、被告の法廷供述から分析し「行動への影響はほとんどない」との見方を示した。
証言に先立ち、検察側と弁護側が改めて冒頭陳述を行った。完全責任能力があったとする検察側は「『自分は全てを失ったのに京アニは成功して許せない』という恨みが動機の基礎にある」と指摘。心神喪失などを主張する弁護側は鑑定医2人の意見が異なるとして慎重な判断を求めた。
[時事通信社]