岸田文雄首相が与党に検討を指示した「期限付き所得減税」に早くも、大ブーイングが上がっている。首相と面会した自民党幹部が「(減税期間は)1年が極めて常識的」と発言したためだ。ただでさえ、所得税減税は法改正が必要で、効果を実感できるのに時間がかかると疑問視されていた。「減税1年」発言で疑問はさらに膨らみ、識者からは、短期間の所得税減税は消費拡大や景気浮揚に「逆効果」との見方まで出ている。
「国民への還元の具体策について、所得税減税も含め、党における検討を指示した」
岸田首相は20日、官邸で自民・公明両党の政調・税調幹部と面会後、記者団にこう語った。
注目の所得税減税の内容は、納税額から一定額を差し引く形を軸とし、期限付きとする方向だ。所得税を納めていない低所得者や、高齢の非課税世帯には給付方式での対応を検討している。
今月26日の政府与党政策懇談会や、その後の与党税制調査会での早急な検討を経て還元策を取りまとめ、11月2日の閣議決定を目指す経済対策の柱となる見通し。減税規模や、期間、対象は年末にかけて与党で詰める。
自民党の萩生田光一政調会長氏は首相との面会後、所得税減税は「本格的な賃上げにつなぐまでの間、近年の税収増を国民の皆さんにお返しするのが目的だ」と語った。
ところが、自民党税調の宮沢洋一会長は、減税期間に関して「1年が極めて常識的」と記者団に語った。この発言に、識者から相次いで疑問の声が上がっている。
荻原氏「かえって逆効果」
20日発行の夕刊フジで国民が経済効果を実感するには3~5年の減税期間が必要と提唱した、経済ジャーナリストの荻原博子氏は「『1年が常識的』というならば、1年で賃金上昇したり、物価高が緩和されたりするなど何か見通しがあるのかと聞きたい。岸田政権のやる気のなさが見えている。減税アピールは内閣支持率を気にしたリップサービスだろうが、内容をせこくすれば、かえって逆効果になることを理解しているのか」と苦言を呈する。
今回の宮沢氏の発言が「詐欺的」とする厳しい見方も出ている。
渡瀬氏「一時的な『詐欺的減税』」
早稲田大学公共政策研究所招聘研究員の渡瀬裕哉氏は「経済的効果を出すには、所得税本体の税率を下げることが必要だが、一切手をつけないだろう。増税方針が既定路線のため、減税が短期間に終われば、国民は将来への期待感も持てず、消費意欲向上や景気回復が見込めない。『詐欺的減税』といわざるをえない」と指摘した。