【処理水放出に中国が嫌がらせ】日本政府の呆れた対抗措置「国民はホタテ食え」「中国在留邦人は日本語しゃべるな」

福島第一原発の処理水海洋放出をきっかけに中国からの嫌がらせ行為が過熱し、国内のみならず中国に滞在する日本人たちも「反日攻撃」の危機にさらされている。ではこの間、日本の政権中枢は国を守るために何をしていたのか──。
「全く想定していなかった」
日本各地に“無差別テロ”のような中国からの嫌がらせ国際電話が殺到し、中国在住の日本人学校の子どもたちが投石に怯えている時、岸田文雄・首相は満面の笑みを浮かべていた。
福島原発の処理水海洋放出の翌日(8月25日)、首相は沖縄に飛び、涼しげなかりゆし姿でその日開幕したバスケットボール男子ワールドカップ(W杯)の日本─ドイツ戦のセレモニーに登場。日独選手を両脇において破顔一笑してみせたのだ。その映像は自らの公式インスタグラムにも自慢げにアップしている。
翌日は火災から再建中の首里城を観光、首相が中国からの迷惑行為についてコメントしたのは、帰京して週末を公邸でくつろいだ後、週明けに出勤してからだった。
しかも、この首相は28日の官邸でのぶら下がり会見で中国を激しく批判するどころか、
「これは遺憾なことであると言わざるを得ないと思います」
そう語っただけで、中国政府による水産物の輸入停止措置に対し、「国民の皆さんにも、ホタテなどの魚介類をメニューに追加していただくなど、ぜひご協力をお願いしたい」と呼びかけた。
政府の対抗措置は「国民はホタテを食え」だったのである。
総理が総理なら、大臣も大臣だ。松野博一・官房長官、林芳正・外相は会見で「極めて遺憾で、憂慮している」と、首相と同じ言葉を繰り返しただけ。
野村哲郎・農水相に至っては、中国の水産物輸入禁止措置を「驚いた。全く想定していなかった」と言ってのけた。それどころか、31日には、について「汚染水」と発言した。この後、岸田文雄首相の指示を受けて謝罪、撤回に追い込まれた。
福島原発の処理水放出は国際原子力機関が報告書で安全性を保証している。中国側の批判は、それを承知の上での「確信犯の言いがかり」ではあるが、それでも中国政府は日本の水産物への輸入規制を段階的に強め、海洋放出すれば全面禁止もありうることを事前に通告していた。
それなのに、日本の水産行政の責任者である野村農水相さえこの事態を「全く想定していなかった」とすれば、お粗末を通りすぎて政権の無能ぶりを露呈している。安全保障に詳しい評論家の潮匡人氏が指摘する。
「岸田首相は投石事件などを受けて『邦人の安全確保に万全を期す』と語り、日本の大使館は中国在留邦人に注意喚起を行なった。しかし、その内容は、『日本語を喋るな』というものです。“現地では中国人のフリをしろ”と言っているも同然で、効果ある対策なのは分かるが、日本人のプライドをどう心得ているのか。日本国民が中国で堂々と日本語を使っても安全なようにするのが外務省の役目でしょう」
あまつさえ、岸田首相は海洋放出から1週間も経ってから官邸でヒラメの刺身など福島県産の食材を使った昼食を取り、安全性をアピールしてみせた。パフォーマンスをやるなら、もっと早く「オレも食べてる。安全なのだ」と中国の批判に対抗しなかったのか。
※週刊ポスト2023年9月15・22日号

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