「妄想だったでは納得できない」遺族涙止まらず 京アニ事件初公判

「これだけの被害を起こしておきながら、『妄想だった』という一言では納得できない」。 京都地裁で5日始まった京都アニメーション事件の裁判員裁判。殺人などの罪に問われた青葉真司被告(45)は初公判で起訴内容を認めた。閉廷後、事件で犠牲になった寺脇(池田)晶子さん(当時44歳)の夫(50)が毎日新聞などの取材に応じ、時折涙を浮かべながら初公判を振り返った。
妻の命が奪われてから4年。小学6年生に成長した長男に「なんでママは殺されたの」と問われる日も近いと感じる。子どもにそれを説明するのが父親の務めだと思っている。納得できる理由が知りたいと法廷に出向き、晶子さんの名前についても実名での審理を望んだ。
車椅子で入廷してきた青葉真司被告を見た時、なぜかぽろぽろと涙がこぼれた。悲しみでも怒りでもなく、自分でも理由は分からなかったという。公判中、証拠などが表示されるモニターを食い入るように見つめる被告の姿に「投げやりな感じではなく、積極的に裁判に参加しようとしている」と感じた。
公判では、青葉被告が小説のアイデアを盗まれたと思い込んだことなどが動機と指摘された。夫は「あまりに身勝手でわがまま。助けてくれる人がいなかったのは可哀そうだと思うが、自分以上に可哀そうな人が生まれるということがなぜ分からなかったのか」と疑問も募った。
「闇の勢力」への反撃だったなどとする弁護側の主張については「何をしゃべっているか、さっぱり分からなかった」と語り、「(長男に)説明したとしても、まったく納得できないと思う」。
公判では犠牲者の一覧が読み上げられ、生前の晶子さんから聞いていた同僚の名前がいくつもあった。「犠牲になった方々の被害の大きさを改めて感じ、ものすごくしんどかった」。それでも、晶子さんや長男に納得してもらえる報告ができるよう公判に通い、自ら被告に質問もするつもりだ。【南陽子、高良駿輔】

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