岸田首相は、東京電力福島第一原子力発電所の処理水海洋放出を巡り、6日に始まる東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議などの場で積極的に安全性を訴える方針だ。
首相は5日、会議が開かれるインドネシアへの出発前、「透明性を持ち、国際原子力機関(IAEA)と協力しながら取り組んでいる我が国の取り組みについて、理解や協力が得られるよう説明を尽くす」と首相官邸で記者団に強調した。
ASEAN関連首脳会議と、インドでの主要20か国・地域首脳会議(G20サミット)には、中国の 李強 首相が出席する見通しだ。岸田首相は一連の会議で李氏から科学的根拠に基づかない主張があれば、反論する。個別の会談なども呼びかけ、李氏に直接、日本産水産物の輸入停止措置の即時撤廃を働きかける考えだ。
日本政府は4日には、世界貿易機関(WTO)に対し、輸入停止措置の撤廃を求める反論書を提出した。
反論書では、IAEAの継続的な関与のもとで、「モニタリング(監視)を重層的に実施している」と説明。海水の放射性物質トリチウム(三重水素)濃度は、計画の放出基準(1リットル当たり1500ベクレル未満)より大幅に低く、「現在までに問題が発生していない」と明記した。
処理水に含まれる年間のトリチウム量は、中国の秦山原発の約10分の1だとも例示し、中国の措置は「科学的原則に基づくものとはみなせない」と厳しく批判した。