関西電力が他の大手電力会社と「カルテル」を結んでいた問題をめぐり、10月12日、関電の個人株主26人が、現旧取締役12人を相手とした「株主代表訴訟」を大阪地裁に起こしました。 「カルテルに関与、または黙認し、会社に多大な損害を与えた」として、約3500億円を関電に支払うことを求めています。 ▼株主代表訴訟とは―― 何のためにある? 株主代表訴訟とは、取締役や監査役らの経営責任を「株主が会社に代わって追及」し、損害賠償を求める訴訟です。取締役らの違法行為や経営判断のミスなどで会社に損害が生じた場合でも、会社側が経営者に責任追及を怠るおそれがあります。そうしたいわゆる「馴れ合いリスク」に備えて、会社法で規定されています。 しかし、いきなり訴訟を起こせるわけではなく、まずは会社に対し損賠請求訴訟を起こすよう請求します。そして、会社がその請求に応じず60日以内に提訴しなかった場合、会社に代わって株主が提訴できるという仕組みです。 勝訴した場合は、損害賠償金は株主ではなく会社に対して支払われます。 ▼価格競争避けようと…他の大手電力とカルテル結んだ関電 今回、株主代表訴訟を起こしたのは関西電力の個人株主26人で、森本孝・前社長や岩根茂樹・元社長など関電の現旧取締役12人に、連帯して約3500億円を支払うことを求めています。 株主らが問題視しているのは、関電が他の大手電力グループと「カルテル」を結んでいた問題です。関電は価格競争の回避を狙い、事業者向けや官公庁向けの電力について、遅くとも2018年秋までに中部電力・中国電力・九州電力とそれぞれカルテルを結び、相手の地盤エリアでは顧客を奪わないよう申し合わせていました。 関電は公正取引委員会にカルテルを「自主申告」したため課徴金は免れたものの、国から指名停止等措置(入札参加停止)や補助金交付等停止措置を受けたほか、大阪府などの自治体からも入札参加停止措置を受けています。 ▼株主らの訴え「入札参加停止などで損害 現旧取締役12人は3500億円余を会社に支払え」 訴えを起こした株主26人は、「カルテルに関与、または看過黙認し、有効な内部統制システムを築かなかった」「入札参加や補助金交付の停止によって多額の利益を失い、高値で電気を購入させられた事業者や官公庁への賠償義務なども生じている」として、現旧取締役12人が約3500億円の損害を関電に与えたと主張しています。 今回の原告の一部はまず今年6月に関電に対して提訴請求を行いましたが、7月28日に関電は「提訴しない」ことを決定。これを受けて、原告らは「株主代表訴訟」に踏み切った形です。 12日は、全国のほかの電力会社3社(中部、中国、九州)に関しても、同様の訴訟が起こされています。 原告代理人の河合弘之弁護士は「(カルテルは)競争制限による利益を消費者から吸いあげる悪い企みです。絵にかいたようなマッチポンプこれを容認にしていいのか。道義的にも許されない」と述べ、原告のひとり、畑厚子さんは「関電いい加減してほしいという気持ちです。カルテルを結んだり本当にいい加減にしてほしい。つぶれてほしいわけではない、電力会社として良い企業になってほしい」と話しました。 いっぽう、関西電力は「株主からの訴訟告知書が届けば、内容を確認し、会社として、本件訴訟への対応について検討していく」とコメントしています。