台風13号に伴う大雨の影響で、茨城県内は8日に線状降水帯が発生して大雨となり、県北地域を中心に河川の氾濫や住宅への浸水、土砂崩れが相次いだ。24時間雨量で観測史上最大を記録した日立市など各地で猛烈な雨となり、日立市役所も浸水。北茨城市では20歳代の男性が川で見つかって死亡が確認された。住民らは9日朝から土砂を片付けるなどの復旧作業に追われた。
「川の氾濫で地下に浸水したのは想定外だった」。9日昼前に日立市消防本部で緊急の記者会見を開いた同市の小川春樹市長はそう漏らした。
同市では、9日朝までの24時間雨量が282・5ミリと観測史上最大を記録するほどの大雨となり、市役所近くの川から水があふれた。市役所の地下にも水が流れ込み、電源機器の機能が停止した。
被害に遭ったのは、東日本大震災後の2017年に建て替えられた新庁舎。防災機能を備え「震災復興の象徴」とされたが被災し、証明書の発行業務を休止するなど支障が出た。10日からは通常業務を再開する。小川市長は「こういう事態になったことをよく検証し、しっかり対策をとらないといけない」と厳しい表情で話した。
県内では、北茨城市も24時間雨量で232ミリと9月の観測史上最大を記録。同市や高萩市には8日夜、避難情報で最も危険度が高い警戒レベル5の「緊急安全確保」が発令された。雨量が多かったこの2市を含む少なくとも11市町村で、計約140棟の住宅などに床上・床下浸水の被害が出た。
日立市小木津町にある「永井ひたちの森病院」では、雨が強まった8日夜に玄関口から水が入り込んだ。院内にいた職員7人ほどが急いで土のう代わりにおむつやシーツを玄関に敷き詰めて、浸水を近くの1階の診察窓口あたりで食い止めたという。
一夜明けた9日朝から他の職員が次々と駆けつけ、モップやぞうきんを使って、水を押し出す作業にあたった。同院の永井直規理事長は「こんな浸水は病院ができてから初めてだ。患者さんに被害がなくてよかった」と話した。
人的被害では、北茨城市内で20歳代男性が行方不明になり、9日朝に近くの川で見つかったが、搬送先の病院で死亡が確認された。男性の車が8日夜、冠水していた同市内の田んぼで見つかったため、翌朝に県警が付近を捜索したところ、近くの川で男性を発見したという。
近くで保険代理店を経営する男性によると、8日夜の雨で現場の道路には水がたまり、ピーク時は高さ1メートルほどの水位になっていたという。当時、周辺には動けなくなった車数台が止まっており、亡くなった男性の車も動けなくなったとみられる。
土砂崩れも相次ぎ、北茨城市や高萩市を中心に計157件確認された。日立市宮田町の県道ではのり面などが大規模に崩壊し、通行止めが続いている。同市十王町高原の県道でも土砂崩れが起き、近くに住む農業の男性(72)は「昨日の夕方から大きな岩と土砂がゴロゴロと流れ出した。こんなことは生まれて初めてだ」と顔を真っ青にしていた。
台風の被害を受け、県は8日、浸水が相次いだ日立市、高萩市、北茨城市で被害が拡大する可能性があるとして、災害救助法の適用を決めた。県内では、6月の台風2号と梅雨前線の影響による大雨以来。
また、県は8日夜に災害対策本部を設置。今後、3市の要望に応じて県職員らを派遣し、災害ゴミの処理を行ったり、市職員に対して 罹災 証明書の発行方法を助言したりするなど支援に乗り出す。