新潟県「三つの検証」公表 原発事故の独自調査、再稼働議論の前提に

新潟県は13日、東京電力福島第1原発事故に関する県の独自調査「三つの検証」の総括報告書を公表した。3月までに有識者委員会から提出された四つの報告書を、県が取りまとめたもので「矛盾および齟齬(そご)はなかった」とした。花角英世知事は、総括を東電柏崎刈羽原発の再稼働を議論する前提としており、今後は可否の判断に向けて本格的な検討に入る。
検証は、柏崎刈羽原発の安全対策に生かすとして2012年に始まった。福島第1原発事故の「原因」「健康と生活への影響」「避難方法」がテーマ。総括報告書は全87ページで、再稼働の是非自体には触れなかった。検証結果については、柏崎刈羽の再稼働の議論で「重要な材料として活(い)かしていく」と記した。
東電は柏崎刈羽の7号機を10月に、6号機を25年4月に再稼働させることを目指してきた。だが、テロ対策の不備で、原子力規制委員会から21年4月に出された事実上の運転禁止命令が解除されておらず、再稼働のメドは立っていない。
花角知事は13日の定例記者会見で再稼働への賛否を問われたが、「結論はない」とし「いろいろな意見を聞きながら私自身の判断も決めていきたい」と述べるにとどめた。今後、説明会や公聴会などで県民らの意見を聞き、再稼働の可否について自らの立場を明らかにする方針だ。最終的には「県民の意思を確認する」とするが、出直し選挙で民意を問うのか、県議会の同意を得て進めるのかなど手段は明らかにしていない。
総括は当初、有識者でつくる検証総括委員会が担う予定だった。だが、柏崎刈羽の安全性も議論すべきだとする名古屋大名誉教授の池内了委員長(当時)と、そこには踏み込まないとする花角知事が対立。池内氏を含む全委員が今年3月で任期満了を迎えたが、花角知事は委員を再任せず、県による総括を進めていた。
池内氏は同日、記者会見し「今回の検証を柏崎刈羽原発にどう生かすかまで述べないと、本当の検証にならない」と批判した。
一方、県議会最大会派の自民党は、東電が事業主体のままでの再稼働には反対する意見が強い。早期の取りまとめを指示した花角知事に対し「再稼働の容認に傾いている」とみる議員もいる。【中津川甫、池田真由香】

シェアする

フォローする