原子力発電所から出る高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場を巡り、長崎県対馬市の比田勝尚喜市長は27日、選定の第1段階となる「文献調査」の受け入れの是非を表明する。受け入れなら、全国3自治体目となる。地域活性化につながるとして市議会は受け入れを求める請願を賛成多数で採択したが、風評被害を懸念する声も根強い。市長の決断に注目が集まる。(島居義人)
文献調査は、3段階ある調査の第1段階。最終処分場事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)が、2年程度かけて地質図など文献を調べ、適地かを評価する。調査に入れば国から最大20億円の交付金が入る。
対馬市議会は12日の本会議で建設関係4団体が連名で提出した調査受け入れと受け入れ検討を求める請願2件について、議長を除く18人で採決し、賛成10、反対8の賛成多数でそれぞれ採択。風評被害を懸念する漁協や市民団体など6団体が出した受け入れ反対の請願6件は不採択とした。
こうした結果も踏まえ、比田勝市長は受け入れの是非を判断。市議会最終日の27日、自身の考えを表明する。今後の市政運営を円滑に進めるには議会の判断を尊重する必要がある。ただ市が文献調査に応募しても、次の段階の「概要調査」には知事の了承がいる。
比田勝市長は採択前、長崎県の大石賢吾知事を訪ね、状況を報告。知事は地域の安全や暮らし、風評被害など様々な影響を考慮する必要があるなどとして慎重な立場を示している。市長は経済産業省に技術に関する質問をしており、国の回答も判断材料の一つとなる。
市長は、再選を目指した2020年3月の市長選で「最終処分場は誘致しない」と主張。今月12日に市議会で請願が採択された後、報道陣に対し、「文献調査を受け入れる発表をした場合、最終処分場の誘致までになると思っている」と語った。
国境の離島・対馬市は人口減少が急速に進む。疲弊する地域経済を背景に市民は島の先行きを案じており、市長の判断に注目が集まる。
賛成の市民からは「過疎高齢化が進む地域の活性化につながる」「国策を受け入れることで、国に要望がしやすくなる」と期待の声があがる。一方で、反対する市民は「農林水産業が風評被害を受ける」「交付金に目をくらませてはいけない」などと訴える。