臨床心理士・経営心理コンサルタントの岡村美奈さんが、気になったニュースや著名人をピックアップ。心理士の視点から、今起きている出来事の背景や人々の心理状態を分析する。今回は、第2次岸田改造内閣について。
* * * “相変わらず、代わり映えがしない”と、ひな壇にかしこまって並ぶ新閣僚たちの写真を眺めた。9月13日、岸田文雄首相が内閣改造人事を行ったが、その顔触れはまるでパッとしない。
整列写真といえば、今年5月、岸田首相の長男、翔太郎氏が政務担当秘書官の時、首相公邸で開いた忘年会で新閣僚発足時を模した写真が流出して、世間を騒がせた。不適切として翔太朗氏は更迭されたが、あの写真はインパクトが大きかった。整列写真として、あれ以上のインパクトが欲しかったところだが、その顔触れは派閥を重視したのがありありと映し出すようなものだった。
女性を登用したといってもそれ以上のものはなく、評価には結びつかなかった。報道各社が発表した内閣改造人事に関する世論調査の結果に、それは見えた。朝日新聞は「評価しない」が57%で「評価する」が25%。読売新聞は「評価しない」が50%で「評価する」が27%、産経新聞は「評価しないが」49.8%で「評価する」が33.3%。共同通信は「評価しない」が43.9%で「評価する」が37.6%。どれも「評価しない」が「評価する」を上回った。評価されなければ、期待はされない。内閣支持率がダウンするのも当然だ。
この結果について岸田首相は19日、「世論調査の結果等は様々なものが出ていると承知しておりますが」と視線をはずして唇をかんでから、「基本的に一喜一憂するのではなく、先送りできない課題について取り組み、そして結果を出すことによって国民の期待に応えていく」と淡々とした表情で述べた。唇をかんで”一喜一憂”という言葉を使うものだから、本心ではきっと世論調査の結果を気にしているのだと思う。
評価されなかったのは、この顔触れでは日本を良くするには力不足、何も変わらないと考える国民が多いことの証左だろう。そんな人たちに新内閣はまるで「ピーターの法則」に陥っているように見えているかもしれない。ピーターの法則とは、組織において有能な人間は出世していくが、その有能さにも限界があり、能力はそのままで出世すると無能ぶりが露呈してしまい、組織の上層部はいずれそんな人間で埋まってしまうという傾向のことをいう。