大阪IR 府と事業者が実施協定を締結 国内初のカジノへ

大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)(此花区)で、2030年秋ごろの開業を目指す国内初のカジノを含む統合型リゾート(IR)について、大阪府は28日、事業者の「大阪IR株式会社」と正式契約に当たる実施協定を結んだ。同社はカジノ運営大手、米MGMリゾーツ・インターナショナルの日本法人とオリックスなどが出資。今後、カジノ管理委員会の審査を経て免許の交付を受ければ、開業に必要な手続きが整う。
事業者は23年秋にもIR用地の液状化対策工事に着手。25年春ごろ本体の建設工事を始め、30年夏ごろの完成を目指す。一方、実施協定には「解除権」も設定。税制上の取り扱いや資金調達の見通し、市による適切な土壌対策の実施など「事業の前提条件」が整っていないと事業者が判断した場合、26年9月までは違約金なしに撤退でき、白紙撤回のリスクが残る。
計画では、約49万平方メートルの用地にカジノや三つのホテル、展示場など延べ77万平方メートルを整備する。初期投資額は約1兆2700億円で、資材費の高騰などで当初より1900億円増額した。年間で約2000万人の来場者と約5200億円(うちカジノ部分約4200億円)の売り上げを見込む。府市は、事業者からの納付金とカジノの入場料で年間約1060億円が入るとしている。
一方、IR用地を所有する市と事業者の間で結ばれた土地賃貸契約では、液状化対策などの費用を市が788億円を上限に負担することが明記された。府市は事業者に対し、35年の事業期間内に、開業時2万平方メートルの展示場を10万平方メートル以上に、同2500室のホテル客室を3000室以上にすることを求めている。開業後の増築で新たに必要となる土壌対策についても別途、市が費用負担することになっており、市は最大約257億円を見込む。
国は23年4月の整備計画認定時、ギャンブル依存症対策や地盤沈下への対応など開業に向けて「七つの条件」を付した。しかし、府市や事業者がこれらにどう対応するかは実施協定には盛り込まれていない。計画の取り組み状況については国が毎年度、評価する仕組みになっており、府市は「事業者と連携しながら、具体的な対応を検討して取り組む」としている。
この日は、夢洲を見渡す府咲洲庁舎50階の会議室で調印式が行われた。出席した吉村洋文知事は「世界最高水準のIR実現に向けた大きな節目の日。大阪・関西の成長の起爆剤になることを確信している」とあいさつ。米MGMのビル・ホーンバックル最高経営責任者(CEO)は「世界に誇れるワールドクラスのIRをつくりたい」と述べた。【野田樹】

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